〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第48章 私を見つけて、戯れに❀家康END❀
「ちょっと、それ以上美依に近寄らないでくれる、軍神」
俺はちゃっかり人の御殿の縁側で、茶を飲み、よもぎ餅を食べる敵国の大将から守るように、美依の腰を自分の方に引き寄せた。
軍神は湯呑みから茶を一口飲み、形のいい眉をしかめ……
その宝石のような二色の瞳を細めて、俺に物申す。
「すでに旦那気取りか、徳川家康。確かに数日前は負けた、だが俺にもまだ勝機はある」
「そんなものは、はなからないから、図々しい」
「いや、必ず美依をこの手中に収めてみせる」
「やれるものなら、やってみなよ。俺は絶対負けないけどね」
「ちょっ……二人とも!」
背中から引き寄せられ、俺にすっぽり包まれながらも、美依はぷんぷんと頬を膨らました。
多分…いや、絶対こいつとは仲良くなれない。
しかし、喧嘩すると美依が不機嫌になるから。
なるべく波風立てないように、穏やかにやり過ごそう。
そう思ってるのに……
軍神は人の神経を逆撫でするような発言をする。
「時に美依、お前は家康の技量で満足しているのか」
「え?」
「家康で物足りないのなら、いくらでも俺を頼るが良い。お前に最高に甘美な夢を見させて、存分に啼かせてやる」
「ちょっと、軍神。黙って聞いていれば……!」
「なんだ、図星か、徳川家康」
「〜〜〜……っっ!」
(やっぱり、こいつとは絶対仲良くなれない……!)
はらわたが煮えくり返る。
もうちょいしたら沸点に達して、刀を抜いてしまいそうだ。
俺が必死に怒りを堪えていると……
俺の腕に包まれている美依が、身体をねじって、ぎゅっと抱きついてきた。
そして、そのまま首だけ軍神の方に振り返り、きっぱり言い放つ。
「ごめんなさい、謙信様。家康で足りないなんて事、ないです。家康は私に最高に甘い夢を見させてくれる…最高の恋人ですから」
(美依……)
美依の言葉で、みるみる心が鎮火していく。
鎮火した代わりに、美依への愛しい気持ちが、これでもかと言う程溢れてきて……
俺は美依の小さな身体をぎゅっと抱き締め、耳元で甘く囁いた。