〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第1章 蜜毒パラドックス《前編》❀豊臣秀吉❀
───広間で行われた宴は、賑やかに執り行われた。
湯気の上がる美味しそうな料理と、美味しそうなお酒を取り囲む。
集まる面々も、信長を筆頭とする安土城の武将達に。
それから……例の謀反を企てる大名とその重臣。
光秀と三成の姿はそこには無い。
それは、大名を捕まえるために、巧妙に裏で動いている証拠だった。
大名は秀吉がお気に入りと言う話から、ずっと秀吉にくっついて談笑をしている。
その妻として……
美依も秀吉の傍にに付き、ひたすらに秀吉と大名に酌をしていた。
「本当に可愛らしい奥方ですな、豊臣様が羨ましい限りです」
酒を煽りながら、大名がにこにこと話をする。
この人の良さそうな大名が、謀反を起こすようには思えないが……
そう思いながら、秀吉の盃にも酒を注ぐ。
秀吉は見惚れるような手つきで、酒に口を付け。
こちらをちらっと見て、返事をした。
「いえ、お恥ずかしい。少し素直過ぎるのが欠点で」
「それも美点と言うものですよ、こんなに素敵な奥方がいらっしゃるのに、何故側室を?」
「それは……」
またこちらを見る秀吉。
すると、慣れたように腰を抱き、すっと引き寄せた。
(わっ…手がっ……)
そう思って、思わず俯く。
すると、頭の上からくすっと苦笑したような声が聞こえ、秀吉が話を続けた。
「妻は子供が出来にくい体質でして……俺も跡継ぎを考えねばなりませんから」
「成程……豊臣の血筋を途絶えさせてはなりませんからな。是非私の娘を気に入ってくだされば、この上ない喜びです」
「はい、考えさせて頂きます」
(子供が出来にくいから……なるほど、いい言い訳を考えたなぁ)
思わず感心してしまう。
誰がこんなにすんなり納得する『嘘』を考えたのだろう。
思わず秀吉の顔を見上げる。
すると、秀吉はそれに気が付き……
この上ない優しい笑みを浮かべてきた。
「……どうしたんだ、美依?」
「な、なんでもありません」
「なら、いいけど。申し訳ありません、側室を娶ると言ったら少々不機嫌でして」
少し困ったように、でも優しい声色で説明する秀吉。
腰を抱きながら、盃を置いた手で、額の髪を梳かれ……
思わず心臓が跳ね上がった。