〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第46章 だいすきだよ。❀真田幸村❀
(……まぁ、来たくないなら仕方ねーけど)
今、佐助が美依を呼びに行ってくれている。
時間的にはそろそろなんだが……
不安と期待と色んな気持ちが入り交じり、さっきから心の中がざわついてうるさい。
こんなに女の事で、内心を乱しているなんて。
我ながらどうしたもんかと思う。
────でも仕方ねーだろ、好きなんだから
「────幸村」
その時。
背後に人の気配と声を感じ、俺は反射的に振り返った。
そこには、会いたくて会いたくて堪らなかった、小さな恋人の姿。
小花柄の薄紅の着物に、艶やかな髪を風になびかせ。
大好きな黒い大きな瞳は、今日は少し翳り…
両手を前で組んで、指をもじもじとさせていた。
「……おー」
俺はなんと言っていいか解らず、いつも通り返事をして美依に向き直る。
そして、何気なしに美依の長い髪に触れ、髪を耳に掛けてやると。
美依はぴくっと身体を震わせ、迷い子のような目で俺を見上げてきた。
(……そんな顔すんな、ばか)
思わず、ぽろっと口から出そうになり、押しとどまった。
喧嘩の続きをしに来たんじゃない。
仲直りをするために、今日と言う日を美依に感謝するために。
────自分に、素直になりに来たんだ
「なぁ、もう一回聞けよ」
「え?」
「今日は何の日かって」
「でも、幸村は……」
「いいから聞けって」
口ごもる美依を促し、必死に見つめる。
美依は瞳を揺らし、なんだか解らないといった表情で。
それでも俯きながら、美依は小さな声でぽつりと言った。
「今日は何の日だ……」
俺は美依が問いかけたのを聞いて。
手に持っていた花冠を、両手で持つと、それをぽんと美依の頭に乗せた。
そして答えてやる。
美依の問いに、聞きたがっていた答えを返してやる。
「お前が俺のお姫様になってから……一年目の記念日だろ?」