〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第45章 姫百合と艶やかな純情《後編》❀明智光秀❀
「ほう……では貴様、見事に美依にしてやられたわけだな?」
目の前で、主君がさも可笑しそうに笑う。
俺はと言うと、その邪気のない笑いに、ただため息をつくしかなく。
それでも釣られて、くすっと笑みを漏らした。
────媚薬の出処を美依に尋ね
やはりなと思った俺は、そのまま天主を訪れた。
何故『やはりな』と思ったかと言うと。
その媚薬は元々、俺の手に渡る物だったからだ。
「美依に見事に騙されました、信長様もお人が悪い」
「何故だ」
「百合根の媚薬は、信長様から私にくださると約束されたのですよ?」
「仕方あるまい、俺は美依の助けになりたかった」
「まぁ、構いませんが。すでに必要ないので」
目の前の湯呑みを取り、茶を啜る。
そして、その媚薬を美依に試そうと思っていた自分に……
改めて心の中で、罪悪感を覚えた。
もっと美依の乱れた姿が見たい。
だから、美依に媚薬を使ってみようと思った。
しかし──……
自分で媚薬を使われて思ったが、あれは自分であって自分ではない。
美依が欲しいと思う気持ちが増幅された。
そう考えれば自分だが、どうしても薬に踊らされている感が否めないのは確かで。
だったら、美依がもっと気持ち良く乱れるように、自分の手腕を磨くべきでは?
媚薬などに頼らず、己の力で啼かせる方がいい。
そんな考えに落ち着いた。
「それで、媚薬を使われてどうだった」
「はい?」
「何か見方が変わったりしたかと言う意味だ」
「そうですね……」
媚薬を飲んで、感じた感情も身体の変化も。
確かに色々自分の中では、たくさん思う事があった。
しかし、俺が今回の事で……
『一番見方が変わったこと』を上げるなら。
「美依が…前以上に可愛く見えるようになりました」
(これしかないな、本当に)
そう思って思わず口元を緩めると、信長様は目を見開き、一瞬拍子抜けしたような表情を見せたが。
やがて、天を仰いで高らかに笑い……
『それは美依に言ってやれ』と、優しく笑みを返してこられた。