〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第5章 境界線のジレンマ《前編》❀徳川家康❀
(美依が欲しいのには違いないんだよな、俺も男だし)
褥での美依はどんな姿なのだろうか。
きっと、聞いたことも無いような、可愛い声で啼いて、快感に身を悶えさせて……
そんな乱れた姿を想像するだけで、脳みそが沸騰しそうだ。
しかし──……
もし痛がったり、美依がまだ早いと思っていたら。
そう思うと、なかなか手が出せない。
無理やり奪うのは、なんか違う。
やはり、美依も同意の上でないと……
それに、美依の男の経験も知らない。
もしかしたら、抱かれた経験が無いかもしれない。
だったら、尚大切にしてやらねば駄目だ。
そんな事を考え出すと、がんじがらめになる。
欲しい気持ちと、美依をもっと大切にしたい気持ちと。
色々ごちゃまぜになって、何も出来なくなる。
そんなにも大事に想う相手は美依が初めてで。
戸惑いがあると共に、なかなか先に一歩進めないのも事実だ。
「家康、どうしたの?眉間にシワ寄せて」
と、いつの間に傍に来たのか。
美依が顔を覗き込んで、指で眉間の間をつついてきた。
くるくるとした黒曜石のような瞳。
純粋無垢で、全然汚れていない。
そんな印象を受ける美依、それをこの手で男の色に染めていいものか。
(…そんな男心、美依は解んないだろうな)
「なんでもないよ、美依が随分はしゃいでるなぁと思って」
「だって、久しぶりの逢瀬だもん、嬉しいよ」
「美依の子供」
「子供でもなんでも、嬉しいものは嬉しいの!」
頬をぷぅと膨らませ、睨んでくる。
ああもう、なんなんだ、この可愛さ。
本当に参ってしまう。
思わず苦笑し、その覗き込んだ美依の頬に触れた。
柔らかく、もちもちとした感触。
大福とか、そんな感じ。
そんな事を言ったら怒ると思うので、それは言わないけれど。
「解った解った、ごめんね」
「ねぇ、家康。もう少し山の方へ行ってみない?」
「別に構わないけど、あまり上までは登らないよ?」
「それはもちろん」
美依が、するっと手を抜け、また前を歩き出す。
今まで頬に触れていた手が少し寂しくなって、思わずその手を握った。