〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第44章 姫百合と艶やかな純情《前編》❀明智光秀❀
(────あ……そうか、私……)
そこまで考えた時。
ようやく、その胸の痛みの正体に気がついた。
何か裏切ってるような……
そんな気がして、胸が痛んだ。
私は自分の身勝手で、光秀さんに媚薬を盛って。
その姿は、確かに私が望んだ姿だったけど。
それでも、それは光秀さんの意志じゃない。
────私、光秀さんを騙したんだ
「光秀さん、ごめんなさいっ……」
「何故、んっ…謝る……?」
「私、私…光秀さんに……んっっ!」
その時、光秀さんが私の言葉を遮り、唇を塞いできた。
薄く開いた唇から、ぬるっと舌が入り込み。
全てを奪われるように、貪られる。
光秀さんの唇はお酒だけじゃない、もっと別の甘い味がして……
まるでそれに麻痺させられるように、思考回路までぼやけていく。
ちゅっ…ちゅぅ、ちゅっ……
儚い水音が漏れ。
それに煽られるように口づけも深まり、逃げようとしても押さえつけられ逃げ場を失くした。
「はぁっ…みつ、んんっ…んぅ……!」
「美依っ…んっ…ぁっ……!」
そのうち、もつれ合うように、身体が縁側に転がった。
身をよじっているせいか、だんだん着物同士が擦れてはだけてきて。
剥き出しになった、肌が触れ合った。
光秀さんだけじゃない。
私の身体もどんどん熱をあげて……
触れた肌が過敏に、そこだけ神経が集まってるみたいだ。
「はぁっ…美依……!」
やがて、ちゅっと水音を立てて唇が離れると、光秀さんは私を組み敷きながら、上から見下ろしてきて……
いやらしく口元を一回舐めると、艶っぽい声で囁いた。
「もう…狂うほどに、お前が欲しい。捧げてくれるな、美依?俺の、この熱を……鎮めてくれるな?」
────それは、まるで懇願するように
その熱を孕んだ瞳、漏れる熱い吐息も。
そこには、私の知らない光秀さんの姿があった。
男の情欲に溺れた、その姿は……
余裕なんて、微塵も感じられない。
赤く染まった肌、色っぽく揺れる腰。
私をいつも翻弄する『大人の男の人』は、どこにもいなかった。