〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第44章 姫百合と艶やかな純情《前編》❀明智光秀❀
「これを貴様にやる。酒にでも混ぜて、光秀に飲ませてみるがよい」
信長様が私に手渡したのは、小さな紙の包みだった。
一見、薬か何かに見えなくもない。
でも、薬ならお酒と飲んじゃダメだよね、多分。
そう思って首を傾げた。
「信長様、なんですか、これ?」
「天然成分の媚薬だな、まぁ生薬とも言えなくはないが」
「びやっ……?!」
「百合根を煎じたものらしい、古くから大陸に伝わる媚薬だとな。外の世界では子作りなどに励む若夫婦が、好んで飲むらしいぞ?」
「な、なななななっ……!」
(び、媚薬って……!)
思わず、顔が火照ったまま固まる。
媚薬と言う存在は、私だって知ってる。
いわば、覚淫剤と言うやつで……
人を異常に『その気』にさせて、行為を促す。
もちろん使った事はないから、どんなものかは実際には解らないけれど。
でも……
光秀さんがこれを飲んだとしたら。
淫らに乱れて、私を求めてくれるのだろうか?
それは、普段の光秀さんからは有り得ない姿。
そんな情欲に濡れる、光秀さんが見れたなら……
思わず、コクっと喉を鳴らすと。
信長様はさも可笑しそうに笑い、私の手を自分の手で包み込んで、その媚薬を握らせた。
「使うか使わぬかは、貴様次第だ。くれてやるから、好きなように使えばよい」
「う、でもっ……」
「なんでも行動してみなくては解らぬ事もある。貴様の光秀の仮面を剥ぎたいと言う意志を組んで、俺は一案をくれてやったまで」
「……」
「戦果を期待していてやる」
その日はそこで、私は天主を去った。
信長様が私にくれた『光秀さんの仮面をはがす一案』
それは、私の心を高ぶらせ、もうそれしか考えられなくさせた。
────媚薬に溺れる光秀さん
それはどんな姿なんだろう。
きっと艶っぽくて、余裕がなくて。
いつも以上に私を求めてくれるに違いない。
そう思った時、もう私の心は決まっていた。
どんなお酒に混ぜようか、考えたりして。
────光秀さんを騙すのだと
そんな事にすら気づかなかった私は。
すでに媚薬の魔力に魅せられていたのかもしれない。
────…………