〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第43章 微色の三日月《後編》❀伊達政宗❀
「がはっ……!」
鋭く入ったこぶしは男を怯ませ、男は刃物を手から落としながら、その場にうずくまる。
続いてこぶしを向けてきた男の手首を掴み、引っ張って足を掛ければ。
男は見事に前につんのめ、思いっきり地面に腹を着いた。
「このっ…調子に乗るな!」
「遅せぇよ、腹がガラ空きだ!」
────ドゴッッ!!
最後に突っ込んで来た男の腹に、膝蹴りを喰らわせれば。
男は『ぎゃっ!』と汚い悲鳴を上げて、腹を押さえて地面に転がった。
僅かな時間で、三人とも地面に転がってしまい…
俺は怪訝な顔をして、ため息をつく。
なんてたわい無い。
一人に三人がかりで、このザマか。
こんなろくでも無い連中を差し向けるなんて…
よっぽど俺は舐められているのか?
「威勢のいい割には、こんなモンかよ」
ぱんぱんと手を払って、美依の方を見ると。
美依は顔を真っ青にして、両手で口元を押さえていた。
怖がらせちまったか。
そう思い、美依を安心させるように、すぐ傍に寄ってぽんと頭を撫でた。
「大丈夫か?悪い、怖かったな」
「だ、大丈夫…政宗、怪我ない?」
「このくらいで、俺が怪我すると思ってんのか?こいつら…多分あの男の差し金だ」
「あの男って…太一さん?」
「ああ、俺に逆上したってとこだろ」
美依は信じられないと言った表情を浮かべ。
が、その表情は引きつり。
目を見開いて声を上げた。
「政宗っ、うしろ────…………!!」
(え────…………?)
声に反応して、振り返った瞬間。
すぐ横を、鋭い刃物が通り過ぎ…
利き腕に、熱く鋭い痛みが走った。
途端に、噴き出す真っ赤な血。
腕を斬られた、そんな風に冷静に判断する傍らで。
美依のつんざくような悲鳴が上がったのが解った。
「クソっ……!」
そのまま斬られた腕で刀を抜き、振りかぶる。
ザシュッと何かを薙いだ音がした。
見れば、刃物を向けた男が、血だらけの腹を押さえてうずくまっているのが解って。
なるほど、腹を薙いだのか。
またそんな風に冷静に判断した。
しかし、あの血の量ならば致命傷ではない。
それも確認し……
俺はゆっくりと刀を鞘に戻す。