〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第43章 微色の三日月《後編》❀伊達政宗❀
「女を置いてけ、兄ちゃん」
「は?」
「ついでに金も少し置いてくなら、文句なし。その綺麗な顔に怪我したくないだろ?」
「……誰の差し金だ、お前ら」
「答える必要はない、言う事聞いてりゃ悪いようにはしない」
『悪いようにはしない』と言いながら、ちゃっかり懐から刃物を取り出す、一人の男。
刃物をチラつかせれば、事は上手いように進むと思っているのか……
ちょっとカマを掛けてやろうか。
そう思い、鼻でふんっと笑うと、そのまま言葉を続けた。
「いくらで雇われたんだ、お前ら」
「は……?」
「金も置いてけって、雇われ賃だけじゃ足らねぇんだろ」
「う、うるせぇな!あんなんで足りるか!」
「やっぱり誰かに雇われたんだな?しかもケチな雇い主に」
俺が言うと、しまったとばかりに、男がぐっと口を噤む。
こんなチンピラのような男達を雇って『女を置いてけ』じゃ、はなから美依狙いか。
『美依狙い』とくれば……
雇い主が誰かなんて、思い当たるのは一人しかいない。
俺が護衛をする事になった、発端の人物だろう。
「帰ってそいつに言っとけ。女を奪いたいなら、正々堂々と来いって。お前らも怪我したくなけりゃ、ここで引き下がりな」
「なっ……!」
「俺を誰だと思ってる……?」
男達に凄みながら、刀の柄に手を掛ける。
この伊達政宗に喧嘩を売ろうなんざ……命知らずにも程がある。
すると、顔を真っ赤にした男の一人が、手に持った刃物をそのまま構えた。
「なら、力づくで奪うまでだ!」
「そのまま帰ってりゃいいものを…よっぽど怪我したいんだな、お前ら」
「うるせぇ!やっちまえ!」
「……っっ政宗……!」
背中の美依が名前を呼んだのを合図に。
男達は一斉に、俺に飛びかかってきた。
刃物は一人、残り二人は素手で。
二人は丸腰だが、一人は刃を向けているのだ。
こちらが抜刀する、正当な理由になる。
だが……
こんな奴らに抜いたら、俺の刀が泣くってモンだ。
俺は刀を抜く振りをして、そのまま振りかぶり……
振り下ろされた刃物を持つ手を、ガシッと掴む。
空いた手ではこぶしを握り、そのまま男の腹に、流れるようにこぶしを突っ込んだ。