〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第42章 微色の三日月《前編》❀伊達政宗❀
「こんな所で何やってる、今日は俺の御殿に来て、褥でたっぷり甘やかされる約束だろ?」
「えっ……」
「な、そうだろ……?」
政宗の囁くような声が、耳を撫でる。
太一さんを交わすための嘘とは解っていても、甘い囁きに思わず顔が火照った。
でも、照れている場合ではない。
私が政宗に同意するように頷くと、太一さんが小さく『なに…』と声を漏らしたのが解った。
「そーゆー訳だから、諦めな。美依、行くぞ」
「う、うんっ……」
政宗に肩を抱かれ、太一さんを残してその場を後にする。
一回振り返って様子を見ると……
太一さんは『クソっ』と言って、踵を返すところだった。
────…………
「……もう、この辺りまでくれば大丈夫か」
政宗に肩を抱かれ、しばらく行ったとこで……
政宗は立ち止まり後ろを振り返って、様子を伺っているようだった。
私も一緒に振り返って見たが、人の波の中に、太一さんの姿は見えない。
(よ、良かった……)
ほぅっと安堵のため息をついて、政宗を見上げる。
政宗は変わらずの不敵な笑みを返し、頭をぽんと撫でてきた。
「助かったよ…政宗、ありがとう」
「たまたま通りかかって、離れた所から様子を伺ってたんだが…随分強引な男だな。誰なんだ、あれ」
政宗に言われ、最近やたら付きまとわれている事を、正直に白状した。
どこかのお金持ちのご子息ってことや、何故か情報が漏れていて、針子の依頼先にまで姿を現すことを。
すると、政宗は何か考えるように顎に手を当て……
やがて、ふっと笑って私に提案してきた。
「それ危ねぇな、常に見張られてる可能性がある。しばらく俺が護衛してやろうか」
「え、本当?」
「ああ、あいつに『お前は俺の女だ』宣言した以上、お前を一人にさせるのはおかしいだろ。今日みたいな事があったなら、尚更な」
「ありがとう、政宗!」
政宗が護衛してくれるなら心強い。
私は嬉しくなって、思わずニコニコ笑って政宗を見た。
すると……
政宗はにやりと笑い、私をすっと引き寄せると。
私を腕の中に囲いながら、耳元に唇を寄せ……
先ほど太一さんの前で言ったような甘い声で、私に囁いてきた。