〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第42章 微色の三日月《前編》❀伊達政宗❀
「さっきの話、既成事実にしてもいいんだぞ?」
撫でるような甘い声に、思わずぴくっと背筋が伸びる。
思わず少し顔を離し、政宗の顔を伺うと……
政宗は艶っぽいような、色気のある目をしていた。
「さっきの話って……?」
「褥でたっぷり甘やかされるって話」
「な、何言って……!」
「嘘は良くないからな。本当の事にしたいなら…協力するぞ?俺の御殿、もう目と鼻の先だしな」
「……っっ」
色っぽい誘う言葉に、一瞬にして身体が熱を帯びる。
政宗は私をからかって、楽しんでるんだ。
そうは思っても、変に心の中で期待して。
行き場のない熱が、体内に溜まる感覚がする。
そんな風に言われて嬉しくないわけない。
だって、私は。
(────……私は、政宗のこと)
「もう、冗談やめてっ……」
それでも私は、それを振り払うように、政宗の胸をグイッと押して腕の中から抜け出した。
政宗が私をなんとも思ってないのは解ってる。
そして、政宗にとっては『そうする事』が、ただの思いつきで、たわいない事なのも。
政宗はその場の感情で動く人だ。
触れたかったら触れる、口づけたかったら口づける。
だから……
きっとこれも、ただの気まぐれでしかないんだ。
「冗談でもないんだけどな、残念」
「まだ言うの?もう、お城に帰るからっ……」
「解った解った、送ってくから」
────こうして、政宗の冗談に振り回されつつ
私はお城まで送ってもらい、なんとかその場を切り抜ける事ができた。
そして、その日から、外出するたびに政宗に護衛してもらい……
そのおかげか、太一さんは私の前に姿を見せることは無くなり、太一さんの付きまといも、見事撃退する事ができた。
……と、思っていた。
まさかね、今日の事が『あんな事件』を勃発する引き金になるなんて、その時は私はまだ、露にも思っていなかった。
私だけではなく、政宗まで巻き込んで。
私は太一さんという人を甘く見ていたのだ。
それが原因になるとも知らず……
私はこの時、政宗に対してドキドキが止まらない。
そんな乙女モード全開のまま、城まで送られ。
火照った身体を鎮めるのに必死になっていた。