〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第42章 微色の三日月《前編》❀伊達政宗❀
(でも、依頼品が遅れるのはだめよね…よし、ちょっと不安だけど行ってこよう!)
私は躊躇ったが、意を決して。
風呂敷に羽織りを包み、依頼主の元に赴いた。
居ても、なんとか上手く交わして逃げてこよう。
そんな風に、単純に思っていた。
しかし……まさか今日起きたちょっとした『事件』が、私の『想い人』まで巻き込んで、とんでもない騒ぎになってしまうなんて。
この時、私はまだ知る由もなかったのだ。
────…………
「それじゃ、ありがとうございました!またよろしくお願いします」
一礼して扉を閉める。
私は依頼品を無事に納品し、少し浮き足立って帰途についた。
今日は、例の人は待ち伏せしていなかったので、少し心が軽くなる。
最近付きまとわれなかった日がないので、今日は穏やかに一日が終わりそう。
そんな事を思いながら、夕暮れの中、足を早めた。
太陽が赤く落ち始め、通りには夕餉の匂いが鼻につく中……
大通りから一本、中の通りに入った所で。
私はいきなり後ろから、ぐっと肩を引かれた。
「え……?」
「美依さん、やっと追いついた」
振り返れば、大柄の体型に、灰色の着物。
少し小さめの意地悪そうな瞳がくりくりと動き……
私が今一番会いたくない人、例のあの人が大きな手で私の肩を掴んでいた。
「えぇと…太一さん……」
「そうだよ、君が羽織を届けに行ったのに一歩間に合わなくて、追いかけたんだ。追いついて良かった、意外に歩くの早いんだね」
「何か、ご用ですか……」
振り切って逃げるのもおかしいので、一旦立ち止まり、太一さんに向き直る。
すると太一さんは、腕を組み直し……
大きな身体で私を見下ろしながら、私に話しかけてきた。
「もう夕餉時でしょう、良かったら俺と一緒に食べにいかない?少し高いけど、美味しいお店知ってるから」
「いえ、ご遠慮します…高いなら、なお申し訳ないし」
「俺にお金の心配は無用だよ、困ってないから」
(そーゆー事言ってるんじゃないんだけどなぁ)
皮肉としか取れない太一さんの言葉に、つい対応に困ってしまう。
なんて言うか……
嫌がっているのを察してほしいのだが。