〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第42章 微色の三日月《前編》❀伊達政宗❀
────私ばかり、ドキドキする
ちょっとした仕草
悪戯に触れられるたびに……
私の鼓動はいつも忙しく高鳴る
全部貴方のせいなんだよ
それを知ってて、貴方はその態度なの?
それなら、貴方は本当にタチが悪い
でも……
どうしようもなく惹かれてしまうから
だから私は毎日困る
ねぇ、私が気持ちを伝えたなら
貴方はどんな顔をするのかな?
少しはこっちを見てくれるのかな
どんなお願いでも聞いてあげる
貴方がそうしてって言うならば
私は頑張って、貴方に向かい合うだけだ──……
(うー…今日も居るのかな、あの人……)
春空澄み渡った、ある日の事。
私は縫い上がった羽織を胸に抱き、小さくため息をついた。
今日、これからこの縫い上がったものを、依頼者さんに届けなければならない。
しかし……
それが躊躇われて、私はさっきからため息の繰り返しだ。
「美依さん、随分気乗りしないようだけど」
「あ、うん。ちょっとね……」
「でも、早く届けないと夕方になるわよ?今日が納めの日じゃなかったの、その羽織」
「うん、そうなんだけど……」
針子仲間の女の子に言われ、思わず苦笑いする。
そう、今日はこの羽織の納めの日。
だから、躊躇ってもなんでも、行かなくてはならないのだけど。
私がこんなに杞憂している理由は……
私を待ち伏せしている『ある人』に会いたくないためだ。
────事は、十日程前
ひょんな事から知り合った、あるお金持ちのご子息。
いかにもお金持ちのボンボンと言った感じの……
何も苦労なんてしてきてないような、そんな男の人に。
私は何故か好かれてしまい、付きまとわれている。
行く先々で声を掛けられ、本当にしつこいったらありゃしない。
しかも、私の情報をどこで入手してくるのか、針子としての依頼情報もダダ漏れで。
依頼先にまで姿を表す始末だ。
でも、とても権力のある人なんだと思う。
依頼先にひょっこり居ても、誰も文句なんて言わない。
(今日も待ってるだろうなぁ、きっと……)
私ははっきり言って、その人が苦手だ。
パッと見は格好いい人かもしれないけど……
それでも、どこか偉そうな態度は、決して好ましいものではなかった。