〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第40章 《御礼作品》私のイケナイ執事さん《前編》❀織田信長❀
「執事……とかどうですか?」
「ひつじ?」
「執事です、身分の高い人に仕える人の事です」
私はそう言って、簡単に『執事』と言うものを信長様に説明した。
多分……
私の想像している『執事』って、現代で見ていたテレビドラマだったり、漫画だったり、そっちの方が影響あると思う。
実際の執事さんなんて見た事がないし。
でも、燕尾服を着た信長様は、そんな私の想像の世界の『執事』にピッタリとハマっているのだ。
格好良くて、紳士的な雰囲気で……
本当にテレビドラマから出てきた人みたいに見える。
「成程、執事か……」
「はい、私が『お嬢様』で信長様が『執事』。お嬢様と執事ごっことかどうですか?」
「お嬢様と執事ごっこ……」
信長様は顎に手を当て、何かを考えているようだったが……
やがて不敵ににやりと笑い、私の顎をくいっと指で掬った。
「良いだろう、やってやる」
「本当ですか?!」
「貴様の頼みなら……そうなると、これは違うな」
すると、信長様は私の顎から手を離し。
お腹に手を当てるようにして、軽く会釈をした。
そして低く甘く、艶っぽい声で言う。
「貴女の仰せのままに……お嬢様」
(……っっ!)
そのあまりに見事な『執事ぶり』に、思わずクラリとくる。
たった一言で、クリティカルパンチを食らったような。
あまりにハマり過ぎていて、一気に心臓が跳ね上がった。
「……何黙っている、貴様の説明だと、これで正しいのだろう?」
「あ、ごめんなさい!つい……」
「執事が使用人と言う立場なら、呼び名も変えねばならぬな。『信(のぶ)』で良い。今から俺は貴様に仕える『執事の信』だ」
「のぶ、さん?」
「そうだ、自分の雇い主に『様』はおかしいだろう。信長様と呼んではならん、解ったな、美依」
「わ、解りました!」
心臓がドキドキと高鳴る。
なんだか夢みたいな、楽しい時間の訪れに。
私は思わず、信長様にニッコリと微笑んだ。
────しかし
私は信長様を甘く見ていたのかもしれない。
『信長様』はどんな姿をしていても『信長様』なのだと言うこと。
そして、私が考えている以上に。
信長様は、遥か先の事まで見ていたと言う事。
私はこの時、それをまだ気づけずにいたのだ。