〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第39章 サクラノアメ-朔夜-❀石田三成❀
「本当に、本当に申し訳ありませんでした……!」
「過ぎた事はもう良い。ただ、それなりの処罰は下す。今回の事で進む足が一歩遠のいた事は、事実だからな」
「それは、覚悟の上です」
どんな処罰だって受ける。
それはすでに腹をくくった事だ、何を言われても驚くまい。
そう覚悟していたのに……
信長様が下した処罰は、驚くほどあっさりしたものだった。
「三成、貴様に当分の登城禁止を言い渡す」
「え……?」
「安土領外に御殿を用意させた、いいと言うまで謹慎していろ」
「それだけ、ですか?」
「ああ、それだけだ」
あまりに軽い処罰に、思わず拍子抜けした。
信長様が畳に頭を付くと同等くらいの、重い処罰を覚悟していたのに。
「そして、美依」
「はいっ!」
「貴様も三成と共に行き、三成の謹慎を見張っていろ」
「え……?」
「こやつはすぐに生活が破綻するからな、三成がきちんと人並みの生活するように、見張り役と世話役を申し付ける」
(信長様……)
美依様と、思わず顔を見合わせる。
結局……処罰でもなんでもない。
私と美依様の仲を、認めてくださったのだ。
謹慎と言う形で、私達が一緒にいる時間を作ってくれた。
本当に……信長様には頭が上がらない。
私は改めて信長様の器の大きさに、感服するしかなかった。
「解ったなら、さっさと準備して行け」
「はい、ありがとうございます」
「良かったな、三成、美依」
「はいっ!」
光秀様も、なんだか柔らかい表情を向けてくれ。
私達は思わず、笑みを漏らした。
昨日の嵐が嘘のように。
天主には春の日差しが差し込んでいて……
穏やかな風が、美依様の長い黒髪を揺らしていた。
────…………
────その後
荷物をまとめた私達は皆様に見送られ、馬に乗って安土の地を後にした。
謹慎処分を受けた人間を見送りにくるなんて。
皆様はどこまでも温かい人間なのだろうと思う。
美依様を腕の中に包むようにして、一つの馬を走らせれば。
目の前の愛しい人の温もりを感じて……
明けない夜はないのか、そんな風にさえ思えて、心にまで温かさが移ってくるようだった。