〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第39章 サクラノアメ-朔夜-❀石田三成❀
「────もう私、帰れないなぁ……」
暫しの蜜な時が流れ……
二人で抱き締め合い、微睡んでいると。
美依様がぽつりと、小さな声で言ってきた。
顔を見れば、いつも澄んで黒く輝く美依様の瞳が曇っていて……
何も映していないような。
そんな気すらした。
「信長様の顔に、泥を塗っちゃった」
「美依様……」
「相手方と戦になったらどうしよう…これじゃ私、信長様に幸運を呼ぶどころか、ただの足枷になっちゃう」
小さくため息を付き、私の胸に顔を埋めてくる。
真面目な美依様の事だ。
とても責任を感じて……押し潰されそうになっているのかもしれない。
「大丈夫ですよ、美依様」
私は抱きすくめる腕に力を込め。
美依様の額に、唇を押し当てながら言った。
「私がなんとかします。信長様にも相手方にも…解ってもらえるように、私から説得します」
「三成君……」
「元はと言えば、私が貴女に曖昧な態度をとったのが原因ですから。もしそれで、どんな処分が下っても…受け入れますよ」
「そんな……」
もしかしたら……
こんな夜を過ごせるのは、最後かもしれない。
美依様の見合いを破談させ、信長様の天下統一の一歩を遅らせたのだ。
『切腹』
そんな言葉が、頭に浮かんだ。
それでもいい。
美依様と想いが通じただけ、良いじゃないか。
私は再度美依様に覆いかぶさり、その身体を褥に沈めると。
頬を撫で、その黒真珠の瞳を見据えた。
「美依様、貴女と想い合えて良かった」
「三成君……」
「だから、今夜だけは後悔したくない。貴女を…もっともっと愛させてください。貴女の中に、私が愛した証を残したいのです」
「……っっ」
「駄目……でしょうか」
まるで、懇願するように問う。
貴女をいくら愛しても、全然足りない。
満たされる感情と、渇いていく感情。
相反する二つが交差して、同時にこみ上げる。
貴女で満ちる半面、もっと欲しいと。
えげつない感覚が、自分を支配していく。
すると、美依様は私の首に腕を回して……
小さく、首を横に振った。