〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第39章 サクラノアメ-朔夜-❀石田三成❀
────貴女が、好きです
大好きです、大好きなんです。
私はもう、貴女を離せない。
例え、主君の決めた事に背いたとしても。
愛しているんです。
心が壊れそうな程、貴女が愛しいのです。
(お願いだから、離れていかないで)
心が悲鳴をあげる。
足りない欠片を求めて、暴走していく。
熱に浮かされた私達は。
いつまでもいつまでも抱き締め合い、唇を重ねた。
お互いを繋ぎ止めるように、強く。
桜の雨の中、時も忘れて。
────…………
────絡み合う声、揺れて
求めるがままに、溺れて
情を孕んだ、儚い夢語り
白い吐息は、熱を帯びて赤く染まっていく
「みつ、なり、くんっ…んんぁ……」
「美依、様っ……」
「ぁあっ……お願い、待って……!」
「待てません、貴女が欲しくて…これ以上待ったら、私は狂ってしまいます」
赤く染まった肌は、指を這わせると、さらに熱を上げる。
狭い部屋の中には、啄む甘い水音と。
喘ぐ儚い吐息が、和音を描いて響いて。
それに煽られるままに、舌や肢体を絡ませていく。
「美依…本当に、温かい……」
隙間なく、ぴったり重なり合えば……
もう、触れ合った部分から溶けて、くっついてしまいそうで。
でも──……
それでもいい、貴女と一緒になれるなら。
このまま混ざり合ってしまえば、もう二度と離れなくて済むのに。
貴女と堕ちる夢ならば。
何も……何も怖くはないのに。
「三成君、早く、帰らないとっ……」
「逃げ出したのは、貴女でしょう…?」
「でも、ぁあっ…誰かに、知られたら……!」
「大丈夫、誰も見ていません。今日は雨だし、朔の夜ですから」
「朔……?」
「今日は新月。月すら、私達を見てはいないのですよ」
美依様と逃げ込んだ、古びた宿屋。
明かりは仄かな蝋燭しかない。
揺らめく二人の影が、障子に映し出されても。
それを止める者は、誰も居ない。
誰一人見ていない、私達の密かな蜜事を。
そう……まるで、見放されたかのように。