〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第39章 サクラノアメ-朔夜-❀石田三成❀
「放っておける訳、ないでしょうっ……!」
私は腕を伸ばし。
背中から、その小さな身体を掻き抱いた。
湿り気の中にある、柔い柔い温もり。
それは、あの夜貴女を抱いた時の……
あの温もりのまま。
貴女はまだ、こんなにも温かい。
「……離して」
「離しません」
「離してよっ……!」
「絶対、離しません……!」
「優しくしないで、私の事なんか、なんとも思ってないくせに……!」
もがく美依様を、力づくで押さえつける。
私はその腕に美依様を感じながら……
心にある言葉を、赤裸々に紡いだ。
「許しませんよ、美依様」
「は……?」
「私以外の男に、あんな可愛らしく乱れる貴女を見せるなんて」
「……っっ!」
「絶対、許しません。あの姿は、私だけのものです。あれは…私だけの美依様の姿ですから……!」
────絶対、嫌だった
貴女が、他の男の腕の中で、咲き乱れるなんて。
あんなに愛らしい貴女の蜜を、他の男が味わうなんて。
耐え難い苦痛だった。
(貴女は、私のものです、美依様)
認めてしまえば簡単な事。
それは激情となって、心に降り注ぐ。
欲しい、貴女が、嫌だ、絶対。
わがままな子供のように、駄々をこねるように。
みっともなくても、曝け出してしまう。
「私、やっと解ったんです。この心を捕らえる感情の名前を。私を掻き乱し、何も手につかなくさせ、そしてあの日…貴女の願いを聞き入れてしまった理由が、やっと解った」
「……っっ」
「流された訳では無かった、全て私自身も望んだ事だったのです、貴女をこの腕に抱きたいと。貴女に抱いてと言われ、歓喜に震えて…気が付かない内に、感情は膨らむに膨らみきっていたのです」
私はその感情の名前を知らなかった。
でも、今ならはっきり言える。
私の中に巣食う、熱情の名前を。
芽吹くのを待っていた、桜の木は。
今、ようやく花を咲かせるのだ。
「私は、美依様を愛しています。心の底から、貴女をお慕いしています。だからお願い、誰のものにもならないで。私の傍に、居てください────…………」