〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第38章 サクラノアメ-恋情-❀石田三成❀
「天然もいい加減にしろ、三成!」
「家康様……」
「美依が…美依がどんな気持ちでお前に会いに行ったのか、本当に解らないのか?!抱いてくれなんて、女が男に願う理由なんて……一つしかないだろ!」
つんざくような、家康様の声。
痛いくらいに掴まれた胸元。
家康様は、まるで泣きそうな表情で……
刹那の叫びのように、答えを出した。
「美依は、お前の事が、好きなんだよ!お前も、美依が好きなんだろ、なんでそんな単純な事が解らないんだよ……!」
(あ…………)
その時、心に一陣の風が吹いた。
まるで、全てを剥ぎ取るように、薙ぐ風が。
そして、浮かんできたのは。
愛らしい、桜の花のような笑み。
『三成君』
それは、ふっと儚く散り……
心の中に、物足りない虚無感が生まれた。
何故、貴女はこんなに私を掻き乱すのかと思っていた。
何も、手につかないくらい。
私を、何故こんなに捉えて離さないのか、と。
────それは、私が貴女を欲していたからだ
そして、貴女も。
その身を私に差し出したのは。
(私を、想っていてくれたからですか──……?)
「何やってんだ、お前ら……!」
その時。
もつれ合う私達に気がついた政宗様が、廊下の奥から小走りで駆けてきた。
それに気がついた家康様は、急いで私から立ち上がり…
バツの悪そうに、明後日の方角を向いた。
「なんでもないですよ、政宗様」
私も家康様に続いて立ち上がり、笑って政宗様に答える。
側に来た政宗様は、怪訝そうにその深青の瞳を細めたが……
何かを思い出したように目を開き、少し焦った口調で訪ねてきた。
「大変なことになったぞ」
「何かあったんですか?」
「美依が居なくなった」
「え……?」
「光秀の目を盗んで、見合いの場所へ向かう途中で逃げ出したらしい」
「そんな……!」
とっさに、家康様を見れば、家康様もこちらを見て眉をひそめてきて。
美依様が逃げた理由が思い当たるだけに……
その視線に耐えられず、思わず逸らして俯いた。