〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第38章 サクラノアメ-恋情-❀石田三成❀
────……なのに、何故
「……っっ!」
瞬間、美依様はくしゃっと顔を歪め。
その澄んだ瞳からは涙が溢れ出した。
触れている肩は、小刻みに震えているのが解って。
雨に濡れて寒いからなのか。
それとも……
「……解った」
「美依様……」
「三成君がそう言うなら、私はお嫁に行くよ……でも、一つだけ、お願いを聞いて」
「お願い……?」
「三成君……」
『一晩でいい、私を抱いて』
「……っっ」
そこまで話を聞いた家康様は。
目を見開き、私の顔を驚いたように見た。
「で、なんて答えたんだ、お前」
「……」
「三成」
「……解りました、と」
「つまり……」
「はい……美依様を、抱きました」
私の言葉に。
家康様は口元を押さえて、絶句した。
その様子に、私は言葉もなく……
ただ目を細め、遠くを見据える。
────ただ、流されただけかもしれない
いつもとは違う美依様に。
あの、熱を孕んだ瞳に、声色に。
私の『男』の部分が、みっともなく欲情したか。
あの後、濡れた小さな身体を抱き上げ、褥に運び……
私は思うがままに、美依様を抱いた。
美依様は、今まで聞いた事も無いような、甘い甘い声を上げて。
それに煽られ、何度も何度も何度も。
美依様の身体に、熱を注ぎ込んだのだ。
「……お前、馬鹿にも程がある」
すると、少しの沈黙の後。
家康様がやっと、と言った様に声を出した。
「美依が孕んだらとか、考えなかったのか。見合い前の女の子を孕ませて、知らずに嫁に行ったとしたら…美依がどれだけ傷つくか」
「……」
「なんで断らなかったの」
家康様の問いかけは、最もだ。
これから嫁に行こうと言う娘を、傷物にしたのだから。
しかも、馬鹿みたいに欲望を、身体の中へと放った。
もしこれで、美依様が子を宿してしまったら。
それを考えなかった訳ではなかった。
でも、私は己を止めることをしなかった。
何故、しなかった──……?
「…解らないんです」
私は家康様に、そう答えるしかなかった。