〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第38章 サクラノアメ-恋情-❀石田三成❀
「大丈夫、美依様は幸せになれます。相手の方はとても素晴らしい方だと、私は信長様から伺っていますよ」
「幸せになんかなれないよ、だって……」
「美依様……?」
「だって私には……」
『────好きな人がいるから』
美依様は瞳に涙をいっぱい溜めて、そう言った。
初耳だった。
美依様に想い人が居るなんて。
私はその相手が気になったが、それでも。
信長様の決めた事は絶対だと思い、美依様をなんとかなだめようと……
その濡れた細い肩を掴み、優しく諭した。
「美依様、とりあえず着替えましょう?湯殿を準備させます、それからゆっくり話しましょう」
「三成君は、私がお嫁に行ってもいいの?」
「え……?」
「三成君は、それで、いいのっ……?」
────その時の、美依様の瞳は忘れられない
何かを訴えるような、何かを求めるような。
そんな、熱を孕んだ瞳。
その見開かれた瞳には、綺麗な雫がきらきら光って……
私は一瞬にして、それに心を鷲掴みにされた。
あんまり綺麗だから、何かに囚われるように。
(……っっ)
そんな経験は、初めてだった。
美依様は可愛く、お綺麗な方だとは知っていたけれど。
でも、そんなんじゃない。
まるで『女』そのものの色香を放っている気がして…
その艶っぽさに、危うく我を忘れかけた。
「私、は……」
『嫌です』と、思わず言いかけて、口篭る。
何を言おうとしているんだろうと。
妙に冷静にそう思えて、口の中が渇いていく。
織田軍のため、何より美依様の幸せのため。
美依様が女としての幸せを掴めるなら……
『嫌です』なんて、答えはないのだ。
だから──……
「────私は、いいと思いますよ」
渇いた口から出た声は。
びっくりするくらい、冷ややかなものだった。
とっさに、それは『嘘』だと解っても。
それでも、答えは変わらない。
それが一番いいと解っているから。
美依様のためだと。
貴女を思うならば、こうするのが最良だから。
そんな風に…ざわつく自分の心をなだめた。