〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第37章 アプリコット*プリンセス《生誕記念》❀豊臣秀吉❀
「美依……もう一回、お前を抱きたい」
────こうして、熱して熱せられ
俺の誕生日は、今年も過ぎていった。
愛する娘と、嫁と、最高の一日を越えて。
俺はまた一つ、心の熱量を上げた。
いつまで経っても、冷めやらぬこの胸の内は。
きっと壊れるまで、その熱を溜め込むのだろう。
それは『愛しさ』の証だから。
俺はそれを抱えて、いつまでも生きる。
馬鹿みたいに、お前達に伝え続けるだろう。
────『ありがとう』と『愛してるよ』を
────…………
「桃、杏〜、そんなに走ると転ぶよ〜〜っ!」
春、麗らかな晴天なり。
花畑の中を転がるようにして走っていく姫二人。
それを必死に追いかける、可愛らしい母。
俺は弁当の重箱片手に、それを後ろから見守った。
今日も平和な俺の家族。
馬鹿みたいに愛らしい、俺の宝物達。
今日もきらきら輝いて、眩しいくらいだ。
(あ、杏が転んだな……)
草にもつれて、ひっくり返ったらしい。
ちょっと心配になって、慌てて駆け寄ると。
杏は泣きもせずに、むっくり起き上がり。
『だいじょーぶっ』とにこにこ笑った。
ああ、お姉さんになったんだなぁ。
そんな風に子供の成長も伺えて、嬉しくなる。
まぁ、誕生日も迎えた事だし、またひと回り大きくなったのだろう。
本当に子供は、大きくなるのが早いな…と改めて実感させられる。
「とうさま、これきらきら、きれいだねー」
と、傍にしゃがみ込んだ俺の首元を見ながら、杏が目をきらきらとさせた。
手でそこに触れてみれば、美依から貰った蒼玉が手に当たる。
あの後、自分で麻紐を括り付け、蒼玉を首飾りにしたのだ。
いつでも感謝を忘れないように、いつでも美依の優しさを感じられるように。
「綺麗だろ、母様からの贈り物だ」
「あん、ほしいなー」
「これは駄目だ、いくら杏のお願いでも…父様の御守りだからな」
「とうさま、かあさまがすき?」
「ああ、大好きだぞ」
「あんより、すき?」
「それは難しい質問だな」
杏も言うようになったな…と苦笑しつつ、ひょいと抱き上げる。
すると、杏は首にしがみつきながら、ちょっと得意げな表情で言った。