〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第37章 アプリコット*プリンセス《生誕記念》❀豊臣秀吉❀
(美依……)
満天の星空の下。
春の少し柔らかい風が、頬をくすぐる。
美依が俺に願った、温かな言葉は……
俺の中に、真っ直ぐに入ってきて。
そして、心の中に…じんわり染み入った。
────かつて、主君に命を預けた自分
自分に価値があるなんて思えなかった頃。
俺にその存在意義を教えてくれたのは、美依だった。
『貴方は生きてるだけで価値があるんだ』と。
そして、美依は俺に生きる理由をくれた。
大事な家族、それを守る為に。
この身は、存在しているのだと。
────この命は、家族と共に在ろう、と
「わっ……!」
俺が石を持っている手と反対の手で、美依の腰を引き寄せると。
美依は可愛く声を上げて、頬を染めた。
いつまで経っても、この初心な反応。
結婚したって、子供が出来たって。
美依は美依、あの日のままの……
花冠を頭に乗せてやった時の、可愛くて綺麗な美依のままだ。
「美依はすごいな」
「え……」
「俺にこんなに溢れる幸せをくれて……どうしてお前はそんなに尊いんだ」
「秀吉さん……」
「信頼と希望なら……ここにあるよ」
俺は美依の額に、そっと口づける。
お前は俺の運命の相手で、何より信頼していて、希望の光だから。
俺を照らしてくれる、鮮やかな光。
何より尊く、何より優しい……
陽だまりみたいな、温かな存在。
「俺はお前達のために生きていける。俺はこの石に輝く星みたいに綺麗ではないかもしれないけど…それでも、お前達を導けるなら、これからも俺に付いてきて欲しい」
「もちろんだよ!」
「俺……欲張りになったのかもな」
「え?」
「もっと幸せになれる気がする」
力を入れて抱き締めれば、美依も俺の身体に腕を回し、ぎゅっと引き寄せてきた。
抱き締めあって、温もりを分け合って……
そうして俺達は生きてきた。
そして、これからも、ずっと。
一緒に繋がる物語を、作っていくんだ。
「なれる気がする、じゃないよ」
すると、美依は胸に顔を埋めながら……
希望に満ちた一言を放った。