〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第37章 アプリコット*プリンセス《生誕記念》❀豊臣秀吉❀
「解った、じゃあ二人を寝かせて行こう」
俺がやんわり笑んで、空いた手で美依の頭を優しく撫でる。
細い髪が指に絡む感触、それに美依が気持ちよさそうに目を細めたので、心が少しくすぐったくなった。
(ああ、やっぱり美依は可愛いな)
子供が出来て、愛すべきものが増えてもなお。
桃や杏とは違った美依への愛しい感情は、常に心にある。
だって、娘は娘。
一生『女』としては見れないからだ。
そう思うと、やっぱり美依は俺の唯一の女だと思う。
少し体温高めな、小さな身体を抱き締めながら。
俺は改めて、愛する妻への感情を再確認したのだった。
────…………
「ああ、もうだいぶ咲いてるなぁ」
美依と手を繋ぎ、踏みしめた土地で。
俺は目を細め、その風景に思わず魅入った。
美依が行きたいと言ったのは、城下外れにある花畑だった。
そこは美依ともよく逢瀬で訪れていたし、子供達も何回か連れてきたし……
また、自分にとっても『特別な思い出』がある場所でもある。
空には濃紺の夜空、天の川が輝き……
そして、下には色とりどり咲き乱れる野花達。
その対称的な二つでも、上手く融合した美しい風景を見ながら、美依はぽつりと言葉を紡いできた。
「ねぇ、秀吉さん、覚えてる?」
「ん?」
「私達の祝言の前夜に、星が降ったの」
「忘れるはずないだろ?俺が呼び出して、ここで二人で見たんだからな」
そう、それは俺達の祝言の前の晩。
『今夜星が降りますよ』
そう三成に教えられた俺は、美依をここへ呼び出し、そして。
『運命の赤い糸』を繋げ合って、二人で降る星を見たんだ。
五百年後にも降ると予想された、その神秘的な星々。
美依の居た時代の、美依の大切な人も見ていますように…と願いを込めて。
そうして眺めた星空は、なんだか懐かしい気がする。
「懐かしいな……」
思わず、そうぽつりと呟くと。
美依は俺の手をきゅっと握り、眩しいものを見るように夜空を見上げながら言った。