〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第36章 淡紅染まりし蜜一夜《後編》❀織田信長❀
「今日の事が無かったら…信長様は私に触れてはくれないんですか…?」
すると、信長様の目が見開いたのが、鏡に映った。
困惑している…と言った表情に見えて。
私はまるで信長様に解らせるように、必死になって言葉を紡いだ。
「信長様がこうするのって、お仕置きだからですよね?つまり、お仕置きじゃなければ、こうはならないんですよね?」
「美依……」
「自分の物に触られたから、だから怒ったんですよね。私は……信長様の所有物、だから…」
「……」
困ってるよね、信長様。
こんな事言ったら、困るよね?
でも、私が信長様のものであるように。
信長様も、私だけのものにしたい。
お仕置きじゃなくても、もっともっと触れてほしい。
溺れるくらい愛されたい、信長様に。
────心が赤裸々に溢れて、止まらない
「私は、信長様が、すきです…だから、お仕置きじゃなくても、もっと触ってください…」
目の前が、だんだん歪む。
涙が瞳に膜を貼ったのが解った。
どうしよう、困らせてる。
信長様、きっと今、困ってる。
よく見えないけど、きっと…
「────美依、こちらを向け」
少しの沈黙の後。
信長様はゆっくり私の顎を後ろから掬った。
そのまま、こちらを覗き込む視線と絡めば…
信長様の瞳は白目が少し赤くなっていて。
眼差しも、一層熱が孕んだものになっていた。
「んっ……!」
そのまま、ゆっくり唇が重なる。
信長様とキスをしたのは、これが初めてだった。
ちゅっ…ちゅぅっ……
優しく舌が絡み合い、まるで蕩かされるように。
柔らかく、甘い甘い口づけ。
さっきまで私を攻め立てていたのとは、全然違う触れ方に……
瞳から、雫が零れ落ちたのが解った。
「俺が、ただの仕置きでこんな事をすると思うか?」
やがて、甘い水音を残して唇が離れると。
信長様は私の涙を指で拭いながら言った。
「好いている女が、他の男に触れられていたら…消毒したいのは当たり前だろう」
「好いてる女…消毒……?」
「誰だって自分の愛しい女には、指一本触れさせたくないものだ」
信長様は優しく微笑み……
優しい声色で、私が一番欲しかった言葉を紡いでくれた。