〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第35章 淡紅染まりし蜜一夜《前編》❀織田信長❀
「嫌がってる割には…いーい反応だね」
「……っっ!」
耳元から首筋に顔が降りてきた途端、ピリッとした痛みが肌に走った。
そして、つーっと舌で舐められ……
ぞわりと身体に鳥肌が立った。
右京さんはにやりと笑い、さらに私を壁に押し付けると。
身体を私の脚の間に入れながら、訳の解らない言葉ばかり、やたら色っぽく言ってくる。
「ね……ここで交わっちゃおうよ」
「は……?!」
「まんざらじゃないくせに」
「ちょ、やめて……!」
「嫌よ嫌よも……かな?承知した」
さらに気持ち悪い手が、私の身体を這って回る。
脚を撫で上げ、胸元は開かれ、開いた胸元に噛みつかれては舌で舐められ。
だんだん息が上がり、逃げたくても逃げられない状態に、涙まで出てきて……
私、このまま犯されてしまうの?
そんな事を思えば、余計に涙が目の前に幕を張った。
(のぶ、なが、様ぁ……!)
最悪の事態が頭をよぎって……
私は流れる涙も拭えず、ぎゅっと目をつぶった。
────次の瞬間だった
「貴様、その女から手を離せ」
突然、明後日の方角からした、威厳のある声。
その聞き覚えのある声に、一瞬耳を疑う。
しかし──……
声がしたかと思ったら、覆い被さるような体制だった右京さんの身体が、私から引き剥がされ。
バキッ!と言う、何か鈍い音がした直後。
その右京さんは、地面に伸びて転がってしまった。
(へ……?)
思わず、キョトンとして地面で伸びる右京さんを見つめる。
頬は真っ赤に腫れ、痛々しい姿。
バキッ!って、もしや殴った音?
しかも、さっきの声は……
そこまで考えた時。
右京さんを見ていた私の顎に手を掛けられ、グイッと上を向かせられた。
(……っっ!)
そして、瞳に映った人物に。
私は思わず声を失う。
夜風にそよぐ、艶やかな黒髪。
強さと優しさを備えた、紅い宝石みたいな瞳。
それは、最高に機嫌の悪そうに細められ……
私を射抜くように見つめていた。
「信長、様……」
それは、私の想い人。
犯されそうになって、頭の中に浮かんだその人が。
私の目の前に、立っていたのだから。