〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第35章 淡紅染まりし蜜一夜《前編》❀織田信長❀
「美依さん、あまり楽しくない?」
「え、そんな事ないですよ、楽しいですよ!」
「でも、なんかつまらなそうに見えたから」
「えと…あんまりこーゆー場に慣れていなくて…」
(近いし、なんかめっちゃ見られてる……!)
右京さんは机に頬杖を付きながら、私の顔を近い距離で覗いてくる。
サラツヤの髪、瞳は濃い綺麗な灰色で……
お城の武将達のおかげで、『イケメンさん』と言うものには慣れた気がするが、それでもなんか落ち着かない。
私は気恥しさを誤魔化すように、手元のお酒をぐびぐびと飲み干した。
「あれ、苦手な割には豪快だね。ほら、もっと飲んで」
そんな私を見て、右京さんは苦笑し。
空になった器に、どんどんお酒を注ぐ。
注がれては飲み、注がれては飲み…
そんな事をしている間に。
だんだんと身体が火照り始め、いつの間にか意識もふわふわしている事に気がつく。
「美依さん、大丈夫?顔、真っ赤だ」
「ん…らいじょうぶ、です」
「ちょっと美依さん、大丈夫?!」
そんな私の様子に、女の子の中の一人、今日誘ってくれた美夜さんが心配して声を掛けてくれた。
私はふわふわとしながら右京さんに肩を抱かれ……
なんだかたくましい胸に寄りかかってしまっていた。
「ごめん、美夜ちゃん。俺が随分飲ませたから」
「右京さんが?」
「責任持って美依さんを送っていく」
右京さんは、私の肩を抱いたまま立ち上がり、釣られて私もゆっくり席を立つ。
倒れないようにしっかり支えてくれて…
ああ、優しい人だな…なんて、鈍い頭の中でそう思った。
「ごめんなさい、右京さん…」
「大丈夫、俺の責任だからね」
「美依さん、頑張ってね!」
店を出る瞬間、何故か美夜さんから激励された。
一体何が頑張ってなの……?
そんな事をふわふわ思いながら、私は右京さんに助けてもらって店を後にした。
でもね。
これが『合コン』だとして、こんな状況ってつまり。
『お持ち帰り』と同じなのだと言うことを。
酔っ払っていた私はちっとも気付かずに…
送ってくれるなんて優しいな、なんて馬鹿みたいに思っていた。
『帰りは迎えを寄越す』
そう言っていた信長様の言葉もすっかり忘れて。