〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第35章 淡紅染まりし蜜一夜《前編》❀織田信長❀
「美依、です…針子をやっています……」
一番最後にしぶしぶ自己紹介をする。
すぐにでも帰りたかったけど、誘ってもらった手前上、彼女達の好意を無下にも出来ない。
せっかく気を利かせて、誘ってくれたのに……
とりあえず、少し食事だけして、すぐに帰ろう。
そう心に決め、私はとりあえず作り笑いを作った。
────そうして始まった食事会…いや、『合コン』
興味ないフリをしていれば、誰も親しく話してきたりはしないだろう。
そんな風に思っていたのに…見てる人っているもので。
私は初めての経験に、されるがまま、流されるまま…
いつの間にか、後戻り出来なくなってしまったのだ。
「美依さん、隣座ってもいい?」
帰るタイミングも掴めぬまま、いつの間にか座席交換まで行われ始め……
当然ながら、ぽっかり空いている私の席の隣。
そんな時、奇特にも私に話しかけてきた男の子が居た。
「あ…どうぞ……」
見れば、無動作に垂らした黒髪の、端正な顔立ちをした男の子だった。
右京さん……だっけ、呉服問屋で働く。
なんかしつけもちゃんとしてそうだし、綺麗な顔をしてるし……
何故、こーゆー場に来たんだろう。
そんな事をおもいながら、私は隣の席に彼を促した。
「ありがとう、じゃあ遠慮なく」
そう言って、隣に座ってきた右京さん。
なんか、やたらぴったりくっついて腰を下ろす。
はじめましての距離じゃないよ、これ……
そんな風に思いながら、私は目の前のお茶に、再度口を付けた。
「美依さん、お酒飲まないの?」
「あ……あまり強くないので、苦手なんです」
「でも、せっかくだから飲まないと勿体無いよ。ほら、乾杯しよ」
「あっ……」
お茶を取り上げられ、代わりに渡された器には果物果汁の南蛮のお酒。
フルーツのカクテルみたいなものだよね……
それなら、そんなに強くないかな?
「はい、乾杯」
「乾杯……」
軽く会釈して、お酒に口を付けた。
柑橘類の甘酸っぱさが口の中に広がり……
思ったよりも飲み口のよいお酒に、再度一口飲む。
そんな私の姿を見ながら、右京さんはやたら至近距離で話しかけてきた。