〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第4章 華火と微熱と光秀さん《後編》❀明智光秀❀
「随分静かですね、ここ、神社の裏ですよね」
不思議そうに美依が首を小さく傾げる。
場所的には、鳥居をくぐって屋台がある場所からまっすぐ進み……
参拝する本殿を挟んで、丁度裏手側に当たる。
鎮守の森の中だが、そこが花火を見るには一番いいと判断した。
「ああ、屋台がある場所からは少し離れているから、静かだろう」
「ここが花火が良く見えるんですか?」
「多分な」
「え、多分って……」
美依がますます疑問の表情を浮かべて、眉をしかめた時だった。
ひゅっ…と音がして、光の筋が空を走り……
ドンッ……と言う腹の底に響く音が鳴る。
「あっ……!」
美依が声を漏らし、
反射的に二人で上を見上げれば。
ドンッ……パラパラパラ…………
ヒュー……ドンッ…パラパラ……
瑠璃色の空に、大輪の華火が咲き始め。
辺りを明るく照らした。
次々に空に花開く華火。
それは幻想的で、美しい光の華が空に咲くたび……
美依の表情が、驚いたように。
また、嬉しそうに花開いていく。
「わぁっ…すごい……!」
「ほう、見事だな」
「綺麗っ……!」
見惚れるように、食い入るように空を見つめる美依。
その横顔は、子供のようにあどけなく。
また、光に照らされ、その陰影は艶っぽくて。
(…………綺麗だな、お前が)
華火よりも、美依に見惚れる自分が居た。
その笑顔、守ってやりたい。
この手で、いつまでも……
そう思い、後ろからそっと美依の肩を抱く。
美依は肩を抱かれても、気が付かないのか、空に心を奪われたままだ。
華奢な肩。
この腕にすっぽり収まってしまう小さな身体が。
心底愛しいと……
甘い甘い感情が、心を支配していく。
「とっても落ち着いて見れますね、ここ」
「だろう?屋台の人混みでは、お前は危なっかしいし、人が邪魔で見られないと困るし、それに……」
「それに?」
肩を抱いた腕に力を込め、ぐっと胸に引き寄せる。
美依は後ろから胸に抱きすくめられる形になり。
目の前の白いうなじまで赤くしながら、そこでようやく慌てて声を上げた。