〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第4章 華火と微熱と光秀さん《後編》❀明智光秀❀
「いい男だろう」
「そ、それは否定しません、けどっ……」
「なんだ、惚れたか?格好良すぎて」
「〜〜〜………っっ!」
真っ赤になって、一生懸命そっぽを向く美依。
こういう感じは、本当に久しぶりで。
もっと慌てる顔が見たいと思う反面、もっと甘やかして笑う顔が見たいとも思った。
くすくすと笑い、その白い額をぴんっと指で弾く。
美依は頬を膨らまし、片手で額を押さえながら、じとっとした目で睨みつけてきた。
「光秀さん、意地悪ですっ」
「今更それを俺に言っても仕方ないだろう」
「むー……」
「ほら…むくれるな。そろそろ行くぞ」
「え、どこへ?」
美依の風車を持っていない方、額を押さえている方の手を、やんわり取る。
そして、その手の甲に唇を押し当てると、美依はぴくっと身体を震わせた。
「み、光秀さっ……」
「もうすぐ花火が上がる時間だ。小さいお前でも、見るのに丁度いい場所がある……ついておいで」
「あっ……」
美依から文句が出る前に、その手を引いて歩き出す。
先ほど探した、花火を見るのに丁度いい場所。
小さい美依でも良く見えて、あまり混雑していなくて……
そして、二人きりになれる場所。
美依は手を引かれながら、半歩後ろを大人しくついてきた。
たまに振り返って表情を伺うと、なんだか拗ねた子供のような顔をして……
なんだか愛しくて、すぐに抱きしめたくなった。
屋台から少し離れると、雑踏が遠のき。
人も疎らになって、ゆっくり歩ける余裕が出来る。
カラン、カラン、コロン……
美依の下駄の音だけが、やたらと響いて。
それは、少しだけ涼しい夏の夜闇に消えていく。
途中、寄り添って歩く恋仲の男女とすれ違った。
浴衣を着飾った女を守るように、傍について歩く男の姿を見て……
ああ、自分と美依も、同じように見えるのか?
ふと、そんな風に思った。
あの者達は、一緒に祭りへ行って、花火を見て。
そして、今日の夜は、一緒に……
そんな事を思って、笑みが零れる。
「もう着くぞ」
屋台を抜け、参拝する本殿を抜けた場所。
それが、今日一番の目的地だ。