〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第33章 胡蝶ノ乱舞《前編》❀秀吉 × 光秀❀
「────美依、居るか?」
あの後、光秀さんと別れ。
城の自室に戻っていた私は、襖の外から掛かった声に、思わず身体を震わせた。
穏やかな優しい声。
その正体に、一発で気がついたからだ。
(秀吉、さんっ……!)
私は寝ようと着始めていた夜着を、急いでまとい。
腰ひもを結びながら、内心高鳴る鼓動を必死に抑えた。
(今、香ってないよね……?)
私には、香の匂いが解らない。
さっき光秀さんの前で付けていた香が残っていたら……
そう思い、袖で急いで首筋を拭う。
そして、一呼吸置くと、私はゆっくり襖を開き、秀吉さんを部屋の中に招き入れた。
「秀吉さん、こんな夜遅くにどうしたの……?」
「お前、宴会を抜け出しただろ?多分酔っ払ったんだと思って、様子を見に来た」
「ありがとう…宴会はどうなったの?」
「今、お開きになった。信長様もお前を心配しておられるぞ、顔が随分赤いな」
秀吉さんが私の頬を、大きな手で優しく撫でる。
光秀さんに火照らされた身体は、まだ冷めてはいなかった。
そのせいで、過敏に反応してしまい……
思わず、熱い息を吐きながら秀吉さんを見つめると、秀吉さんは目を見開いて喉を鳴らした。
「……なんだ、その顔っ………」
「え……?」
「酒に酔っただけじゃないだろ、俺を騙せると思ってるのか?」
「あっ……」
次の瞬間、秀吉さんがふわりと私を掻き抱いた。
大きなたくましい身体にすっぽり包まれ……
また、秀吉さんから香る、秀吉さん自身のいい匂いを感じてしまい、ぞくりと心が疼く。
「……ほら、こんなに熱いじゃないか」
火照った身体をなぞられ、さらに熱く吐息が漏れていく。
さっき抱かれたせいで過敏になってる身体。
それはちょっとした事で、すぐにスイッチが入ってしまう。
心臓がばくばく高鳴っているのを堪えていると……
秀吉さんは私の耳元で、少し掠れた色気を帯びた声色で、こう囁いた。
「────今、『あの香』は持っているか?」
(……っっ!)
秀吉さんから放たれた一言に、思わずびくりと身体が跳ねる。
それは、秀吉さんとの合図。
光秀さんが言ったのと、同じ意味を持った……
────先程と、全く同じ『合言葉』