〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第33章 胡蝶ノ乱舞《前編》❀秀吉 × 光秀❀
「ぁっ…んっ……」
すると、その声を聞いた光秀さんは、眉をひそめ……
だけど、それも一瞬の事で、すぐにまた意地悪な表情になると、悪戯に何度も指で首筋を撫でた。
「なんだ……随分と色っぽい声を出す」
「ち、違いますっ…光秀さんが触れるから……!」
「成程な、では……これならどうだ」
「ひゃっ……!」
そのまま耳に髪を掛けられたと思ったら、今度は外気に晒された耳を、かぷっと噛まれ。
私は思わず、素っ頓狂な声をあげた。
でも、それだけでは終わらず、耳のふちに沿って舌を這わせたり、耳の中に舌が入ってきて、くすぐったりしてくる。
ぴちゃっぴちゃっ…となんだかいやらしい水音が、耳の中に入ってきて……
私は光秀さんの肩に手を置いて、身体を引き離すように力を入れた。
「ちょっ……やめて、くださいっ……!」
「お前は俺に意地悪をされるの、好きだろう……?」
「……っっ!耳元でしゃべらないで……!」
「解った、では最後に一つだけ」
すると、光秀さんは一回ちゅっと耳たぶに口づけをして。
私と光秀さんしか解らない『合言葉』を囁いた。
「────今すぐ『あの香』をつけろ」
(あ…………)
その『合言葉』の意味を瞬時に理解し、赤い頬がますます赤く染まる。
『あの香』をつけろ。
それはつまり、ここで……
「光秀さん、ここ外っ……」
「こんな庭の外れに、誰も来ない。それに…お前、今自分がどんな顔をしているか、解っているのか?」
「え……?」
「そんなに物欲しそうな顔をして…顔が赤いのは、本当に酒のせいだけか?」
耳から顔を離した光秀さんが、目の前で艶っぽく笑う。
そして、私に向けて……
熱と恍惚が交差する瞳で、理性を壊す一言を放った。
「お前が俺の熱を忘れられないのは知っているぞ……俺が何も解らないと思っているのか?お前を慰めてやれるのは、俺だけだ。その身に…再度甘い刺激は欲しくはないか」
(……っっ!)
脳裏に浮かんだのは、与えられた蜜な時間。
逃げられない程の熱。
それは、私の中の『淫魔』を呼び覚ます。
私は光秀さんに、こくっと頷くと……
袖から『悪魔の香』を取り出し、首筋にそれを塗りつけた。