〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第33章 胡蝶ノ乱舞《前編》❀秀吉 × 光秀❀
────秘密に蜜なる交わりを
約束なんて、曖昧なもの
情欲を前に、抗えるものなどなく
ただただ、快楽を求めては
駆け上がり、弾けて、露に濡れるだけ
どちらが先に魅入られたとか、
そんなものは、どうでもいい
繋がってしまえば、目的は一つだ
今宵もまた華開く
淫らな蜜華が、しどけなく花弁を開き
それは儚い、蝶々の乱舞────…………
(……少し、酔っ払ったかな)
ふわふわとする頭、若干熱くなった頬に手を当て……
私は小さくため息をついた。
今は、安土城での祝宴真っ盛り。
気温も上がり、桜も咲き始めたので……
信長様が武将達や家臣達を集めて、早速中庭で春の夜宴となったのだ。
私と言えば、信長様にお酌をしながらも、反対に酌をしていただき、ぱかぱかと呑み進めるうちに……
すっかりお酒が回ってしまって、ぼーっとしてきてしまった。
なので、こっそり宴を抜け出し、夜風に当たりながら、酔いを冷ましている状態だ。
(うー……飲み口いいからって、たくさん飲むもんじゃないよね)
冷たい風に当たりながら、さらにパタパタと手で仰ぐ。
本格的に酔っ払わないうちに、部屋に戻っちゃおうかな。
そんな事をふっと考えていると……
「どうした、美依。こんな庭の外れで」
背後から、低くやたら艶っぽい声が聞こえた。
振り返ってみれば、白銀の髪を夜風に揺らし、意地悪そうな琥珀色の瞳を携えた……
明智光秀さん、その人がいつの間にか背後に立っていた。
「光秀さん、少し酔っ払っちゃって……」
「そのようだな、随分顔が赤い」
「信長様とかみんなが随分酌をしてくれたから、つい呑みすぎちゃって」
「なんだ、白酒程度でそのザマか。お前もたわいないな」
光秀さんが可笑しそうに笑い、熱くなった頬に指で触れてくる。
そのザマかって……
光秀さんはお酒に強すぎるから、そんな事を言えるんだ。
私はお酒は好きだけど、決して強くはない。
まぁ、雰囲気に飲まれて呑みすぎてしまったけど……
すると、光秀さんは頬に触れていた指を滑らせ、そのまま剥き出しの首に触れた。
皮膚の薄い首筋を長い指でなぞられ……
ぞわりと肌が粟立って、思わず熱い吐息を漏らしてしまった。