〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第32章 如月の雪紅華《生誕記念》❀上杉謙信❀
「────ありがとう、美依」
美依を堪能し、ゆっくり唇を離すと。
俺は若干潤んだ美依の瞳を覗き込み、小さく笑った。
「お前のおかげで、最高の誕生日になりそうだ」
「謙信様……」
「現に、この甘味は美味い。お前が心を込めて準備してくれたものだからな」
「……っっ」
「お前に祝ってもらえるなど、俺はこの世で一番幸せ者だ」
愛する女が生まれた日を祝ってくれるなど。
そんな幸せなことは無い。
美依は本当に、俺に溢れる程の幸せをくれる。
すると、美依は机の上に甘味を置き。
そのまま、俺の身体にしがみついてきた。
そして、何とも幸せそうに口を開く。
「謙信様……お誕生日おめでとうございます」
「ああ、ありがとう」
「精一杯祝わせてください、謙信様の心に残るように」
「……そうだな」
俺は美依を掻き抱き……
己の本心を、信じられないくらい素直に呟いた。
「お前が居ると、この心はお前だけで埋め尽くされてしまいそうだ。お前が傍に居て、心に残らないものが無いように」
それを聞いた美依が、はにかんで笑ったのを見て。
再度その柔らかな唇を塞ぐ。
馬鹿みたいに、感情が高ぶって……
俺は、思わず目頭が熱くなったのを、ぐっと堪えた。
ああそうか、これが『愛しさ』と『幸福』なのだと。
零れそうになった雫の名前を、改めて悟った。
涙は悲しい時だけに滲むものでは無い。
(幸せすぎても……泣けてくるものなのだな)
俺は、美依の唇を改めて堪能しながら。
二色の目に滲んだ『幸せの証』が零れないように、必死に噛み締めた。
────…………
────その後
城のある一室を飾り付けていると言う信玄の元に、俺と美依、佐助、幸村で行ってみれば。
『やっぱり隠せなかったかー』と信玄は当然のように笑った。
そのまま料理が運ばれ、美依と佐助で用意した甘味も並び、信玄と幸村で用意した酒も置かれて。
そのまま俺の誕生日を祝う宴になった。
美依は俺を精一杯もてなすと……
傍で酌をしながら、可愛らしく微笑んだ。