〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第32章 如月の雪紅華《生誕記念》❀上杉謙信❀
(本当に、温かいとはこのような感情なのだな)
生き急ぎ、戦に悦びを感じていた自分。
そこからはかけ離れた、反対側の感情に……
躊躇いはするものの、嫌ではないと思っている自分が居る。
それに美依が居てくれるから。
この身は在り、生きていけるのだと。
改めて、愛する者の存在の大きさを知る。
そして、愛しているからこそ……
愛でて、全てを自分のものにしたいと。
そんな、束縛心と支配心。
美依に囚われたこの身は赤裸々に──……
愛する者を求めて止まない気持ちは加速する。
「────うん、非常に美味い」
俺が注がれた酒を煽り、笑みを漏らすと。
美依は心底安心したように、俺に続いて笑んだ。
────祝いの宴後
自室に帰ってきた俺と美依は、美依が用意した酒で、改めて二人で飲み直していた。
美依からの贈り物だという、酒と梅干し。
それは最高に己を満足させ、心を満たす。
俺は酒に続き、梅干しを口に含むと。
丁度良い酸味を味わいながら、隣にいる美依の顔を見て、再度小さく笑った。
「塩加減も丁度いい、美味い梅干しだ」
「良かったー!私の手作りの減塩梅干しですよ」
「お前が漬けたのか?」
「はい、あまり塩辛いと謙信様の健康に良くないので、頑張って作りました。その分、それに合うお酒も探して……」
「確かに、この酒によく合う」
美依の心遣いを感じて、心の中が温かくなる。
梅干しは一日や二日で出来るものでは無い。
随分前から、俺の為に用意してくれていたのだと……
それを思うと、また美依に愛しさが生まれてくる。
それに、その梅干しに合う酒も探してくれて。
これ程酒が美味いと思ったのは、初めてかもしれない。
「酒と梅干しは礼を言う。しかし…あの煙玉の仕置きはせねばならんな」
俺が美依の細い腰に腕を巻き付け、ぐっと引き寄せると。
美依は俺の顔を見て、大きな目をさらに見開いた。
そして、まるで焦ったように……
ちょっと頬を染め、目を合わせないように視線を泳がす。