〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第32章 如月の雪紅華《生誕記念》❀上杉謙信❀
「け、謙信様……!」
青くなる二人を尻目に、歩いて近寄る。
すると、佐助が『愛を込めてまじないをする』と言った何かを、急いで背中の後ろに隠したのが解った。
「幸村を脅して聞いてきた、台所で準備をしていると」
「幸村ぁぁ…ちゃんと謙信様を見張っててと言ったのに……!」
「成程、俺に酌をして見張っていたのか」
「美依さん、それ言ったら駄目だよ……」
「背中に隠したのは何だ、もう全て解っているから隠しても無駄だ……俺の誕生日祝いを用意していたのだろう?」
────今日は二月十八日
すっかり己でも忘れ去っていたが…
今日は俺の幾度目かの生まれた日だった。
あまり重要な事では無い故に、思い出すのも忘れていたし、思い付きもしなかったが。
考えてみれば、この日は毎年宴やら何やらをやっていたような記憶はある。
俺が二人に核心を付くと、二人は顔を見合わせ。
そして、盛大にため息をついて脱力した。
「すっかり知られちゃったんですね、トホホ」
「美依さん、やっぱり謙信様に気付かれずに全て準備しようなんて無謀だったかな」
「そうかも…佐助君巻き込んでごめんね」
すると美依は、佐助が先程背中に隠した『何か』を手に取り、すっと俺の目の前に差し出した。
それは見たことも無い、多分西洋の料理。
丸い筒型で、上には苺が均等に並び……
白い生凝乳のようなものが周りに塗りたくってあり、何やら甘ったるい匂いを漂わせている。
「ごめんなさい謙信様、隠したりして…こっそりお誕生日のバースデーケーキを作っていたんです……」
美依はしゅんと小さくなり、ぽつりぽつりと話し出した。
『ばーすでーけーき』
聞いたこともない言葉だが、それはきっと美依の手の中にある、この料理の事を言うのだろう。
「ばーすでーけーき……」
「はい、お誕生日に食べる、この甘味の名前です。佐助君にこっそり材料を用意してもらったので…謙信様に内緒で用意してたんです」
「何故、隠して用意していた」
「謙信様をびっくりさせたかったんです、恋仲になって初めてのお誕生日だから…喜んでほしくて。だから、佐助君にも幸村にも、信玄様にも、協力してもらって…内緒でお祝いの準備を進めていたんです……」