〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第4章 華火と微熱と光秀さん《後編》❀明智光秀❀
「……俺を避けていたんじゃないのか」
「えぇと、それは……」
「何故来た」
「……っっ」
「言えないのか」
真っ赤になるばかりで、黙ってしまう美依。
それでも、こうして来てくれたのは、少しは希望を持ってもいいのか。
男と二人で逢瀬をすると言うのは、つまりはそう言う事だろう?
美依だって、そのくらいは解ってる筈だ。
「言えないなら、今すぐ帰れ」
「わ、私はっ……」
押し黙っていた美依だったが、やがて意を決したように口を開いた。
「光秀さんに誘ってもらえて、すごく嬉しかったんです……避けてたのは、ごめんなさい。それは、そのっ……理由を言うのは、今は勇気がいるので…もう少し、待ってもらえますか……?」
小さな声で、恥ずかしそうに……
チラッチラっとこちらを見ながら、少しずつ言葉を紡ぐ。
なんだかその様子を見ていたら……
避けられて苛立った事や、疑問や、今日待っている時の不安や複雑な感情。
そんなのが溶かされ、サラサラと流れていったような気がした。
今、美依はここに居る。
それだけで……もう良いんじゃないかと。
「……俺も、甘いな」
「え?」
「何でもない、本当にお前は…世話のかかる小娘だ」
思わず口元が緩み、苦笑が零れる。
そのまま手を伸ばし、美依の髪が崩れないように、そっと頭を撫でた。
美依は夜でも解るくらい、頬を赤く染め。
一瞬びっくりしたように目を見開いたが、その後微かに笑みを浮かべ……
はにかんだような、愛らしい表情を浮かべた。
鳥居の方まで、祭りの熱気と匂いが漂い……
その独特な空気に飲まれるように、自然な流れで美依の小さな手を取った。
「あっ……」
「……嫌か?」
「い、いえ……」
「なら、行くぞ」
短く言葉を交わし、祭りの方に足を向ける。
美依の手を引き、ゆっくり歩き出せば……
美依は半歩後ろを、ちょこまかと追ってくるように歩き出す。
繋がれた手と手。
そこから温もりが伝わり、やはり美依は温かいんだと改めて思った。
呆れる程、甘く痺れるような感情を覚え。
そして、それが心地良いと。
馬鹿みたいに心が満たされていく。