〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第32章 如月の雪紅華《生誕記念》❀上杉謙信❀
「逃げたか……何を考えている、あの二人…しかも佐助、両手塞がっていたのではなかったか」
思わず、ギリッと奥歯を噛む。
何か心に、もやもやが残り。
それは、美依と佐助が何か隠していると言う確信が持てたからで。
己が知らない所で何かが動いてる現実に……
みっともなく嫉妬心が剥き出しになったのも、事実だった。
────…………
「謙信様、注ぎますよー」
「……」
「謙信様、ほら仏頂面やめてくださいって」
「……」
その日の夜。
俺は何故か幸村に酌をされながら、雪見酒をしていた。
あの後、探しても探しても美依と佐助の姿が見当たらず……
イライラして暴れてやろうとしたら、幸村が止めに入ってきた。
そして、それからは自室で幸村に酌をされながら、酒を呑んで気分を紛らわしている。
面白くない。
はっきり言って、不愉快だ。
「……美依、佐助、まだかよ………」
その時、幸村が聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で、ボソッと呟いた。
『美依』『佐助』
その名前が幸村の口から出た事で、反射的に酒を呑む手が止まる。
もしや……幸村も何か知っているのではないのか。
「……幸村」
「はい?」
「美依と佐助がどこにいるか、知っているか」
俺が幸村に問うと。
幸村はあからさまに挙動不審になり、目を泳がせながら、後ろ頭を手で掻いた。
「い、いえ、知りませんが」
「知っているのだな、承知した」
「へ?……ちょっと、謙信様?!」
刀の柄に手を掛ける俺に、幸村が座りながらも後ろに後ずさる。
こうなったら、幸村に吐いてもらう。
俺の苛立ちは、すでに最高潮に達しているのだから。
俺は刀の柄に手を掛けたまま、幸村を睨みつけ。
そして、凄味を帯びた声色で、幸村に問いただした。
「言え、二人は今どこにいて、何をやっている」
「け、謙信様……!」
「俺に隠れてこそこそと……何を隠している」
「そ、それは……」
「斬られたいなら、答えなくてもよい」
俺は立ち上がり、すらりと刀を抜くと。
座ったままの幸村に、その刀先をピタリと差し向けた。