〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第31章 〖V.D企画〗甘い恋人-家康編-❀徳川家康❀
「あ…美依、寒い?」
「少しだけ……でも、大丈夫」
「大丈夫じゃないでしょ、風邪ひかせたら、俺が秀吉さんに怒られる」
俺は立ち上がると、物置の隅から毛布を拾い、再度美依の隣に座り込んだ。
そして、ふわりと美依の肩に毛布を掛ける。
すると、美依は毛布と俺を交互に見ながら、何やら疑問の視線を投げかけてきて……
俺はバツの悪そうに、後ろ頭を搔くしかなかった。
「なんで、物置に毛布があるの?」
「……秀吉さんと光秀さんが置いてったから」
「え、なんで……?」
「……」
今更だけど、秀吉さん達には俺の気持ち、知られていたんだな、と思う。
俺があまりに臆病になっているから、見ていられなくなったのだろう。
そう思うと、少しは感謝せねばならないのか。
こんな力押しで、強引なやり方だけれど。
「二人は、俺に気を利かせただけ」
俺はぼそっとそう言うと、美依にさらに近寄り、肩をくっつけて座り直した。
毛布で隔てられているけど、美依の温もりを感じる。
その温もり、俺だけのものにしたい。
俺だけの……美依になってほしい。
「────美依、甘味は作ったの?」
「え?」
「今日、ばれんたいんでー…なんでしょ?」
俺は毛布の話題から逸らし、美依に聞きたかった話題を振った。
こうなったらもう、覚悟を決めろ。
美依の想い人が誰であれ、俺は美依が好きだから。
誰にも、あんたを渡したくないと。
それを伝えるくらいなら……許されるだろう?
「あ……作ったよ、甘味」
すると、美依は少し顔を染め、ぽつりとそう言った。
作った、という事は。
それを受け取る相手がいる訳で。
それは……美依の想い人な訳で。
(今、言わないと、美依に……)
その甘味、誰に渡すの?
俺は、それを誰にも渡して欲しくない。
だって……俺は美依が好きだ。
言うべき台詞を頭の中で繰り返す。
俺はぎゅっとこぶしを握り……
すぐ間近で頬を染める美依を、睨むように見つめた。