〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第31章 〖V.D企画〗甘い恋人-家康編-❀徳川家康❀
「え…朝まで片付け?え、え……?」
どうやって説明するんだ、この事態。
美依は『閉じ込められた』意識がない上に。
男としての誇りにかけても、『何も無かった』じゃ済まされない事。
まさに『強行突破』、ゴリ押しの作戦。
城の片付けをしろなんて言われた時点で、疑ってかかるべきだったのだ。
(ああもう…本当にどうするんだ、これ……)
まだ寒い、如月の冷たい風も吹く今日は『ばれんたいんでー』
狭い狭い物置に、閉じ込められた俺と美依。
『何事も無く過ごしたい』と言う気持ちと、『何かあってほしい』と願う自分がせめぎ合って……
俺はもう一度、小さくため息をついたのだった。
────…………
「……」
「……」
美依と隣同士に座り込んで、無言の時が過ぎる。
あの後、片付けを頼まれたと信じて疑わない美依と一緒に、物置を整理整頓し。
大して散らかってもいなかった物置の中は、あっという間に片付いてしまった。
そして…美依も何か変だと勘づいたのだろう。
開かない扉を目の前にして、疑問になりながらも、俺が慌てない様子を見て……
大人しく俺の隣に座り、小さく丸くなっている。
「……扉、開かないね」
「そうだね」
「外から鍵が掛かってるのかな……」
「……そうだね」
(……本当に覚えてなよ、二人とも……)
美依になんて説明を切り出せばいいか解らない。
説明するには、自分の気持ちも美依に伝えねばならないからだ。
今まで臆病になっていて、伝えられなかった、この身の内の想い。
そんな簡単に伝えられていたら、こんなに悩まない。
小さくため息をついて、美依の表情を盗み見た。
(そう言えば、こんなに間近で見る機会もないな……)
そう思って、ついまじまじと凝視する。
真っ白な肌、黒い宝石のような大きな黒い瞳。
そこに影を作る長いまつ毛は憂いを帯びていて……
自然と視線を下に降ろすと、今度は桜色の唇が目に入る。
思わず吸い寄せられるように見ていると。
美依の表情が歪み、小さくくしゅんっとくしゃみをした。