〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第31章 〖V.D企画〗甘い恋人-家康編-❀徳川家康❀
「え、城の物置の片付け……?」
次の日、『ばれんたいんでー』当日。
公務が終わり、御殿に帰ろうとしていると……
秀吉さんに捕まり、何やら話を聞いた俺は、盛大に眉をひそめた。
物置の片付けって……
それを俺がする理由がどこにあるのだろう。
しかも、自分の御殿ではなく、城のだ。
「……三成辺りに頼めばいいじゃないですか」
「三成に頼んで片付くと思うか?頼む、美依にも手伝ってもらってるから」
「え、美依にも?」
「女手もあった方が助かるだろ?美依はお前とならって快く引き受けてくれたぞ」
『美依』と言う単語にいちいち反応してしまう自分が悲しい。
でも、俺とならと、快く引き受けたと。
まぁそれなら……やってやらない事もない。
そう単純に思ってしまう自分に呆れながら、俺は秀吉さんの横を早足で歩き始める。
「……後でなんか奢ってくださいよ」
「いやぁ、助かる。ありがとうな、家康」
「別に、美依一人にやらせたら朝まで掛かりそうだから」
「それは好都合だな」
「……は?」
秀吉さんの一言に思わず聞き返すと、秀吉さんは俺の横を歩きながら『しまった』とばかりに、口を手で塞いだ。
(……怪しい)
秀吉さんと美依はよく似ている。
嘘をつけない所とか、真っ直ぐ過ぎる所とか。
明らかに、この表情は失言したと言った様子だ。
秀吉さんに限って何か企んでいるとかはないだろうが、でもこの挙動不審ぶりは少し怪しい気がする。
「……なんかあるんですか」
「いや、別に何も無いぞ。さぁ、早く行こう行こう、夜になっちまうからな」
すると、秀吉さんは俺の肩をわしっ!と抱き、大げさに誤魔化すように、ずんずんと歩いていく。
怪しい、明らかに怪しい。
でも、何が怪しいと断定出来るわけでもなく『なんか怪しい』程度では問い詰める事も出来ない。
(美依と言えば…甘味は作ったのかな)
強引に歩かされながら、ふと心の中に過ぎった。
もう渡したのだろうか、想い人に。
……一体、誰に?
途端に心にもやもやが広がる。
想いを言葉に出来ない以上、そんな感情を持つことすら駄目な気もするけれど。