〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第30章 〖V.D企画〗甘い恋人-政宗編-❀伊達政宗❀
「美依はどうした?」
「えぇと、その……」
「それに、なんか焦げ臭くないか。中で何かやってるのか?」
「実は、その、美依様が台所で……」
「美依?」
それ以上は、女中は何も答えない。
困ったように、顔を見合わせるだけだ。
訝しんだ俺は、刀をさっさと預け、台所へと向かった。
一体、美依は何をやっているのか。
料理?何か作っているのか?
もしかして、俺に隠した『企み事』じゃないよな?
色んな疑問が渦巻きながら、廊下を進む足を早める。
薄暗い廊下を抜け、途中じゃれついていた照月も交わして。
仄かに明かりが灯る台所に着いてみると──……
何やら台所中は散らかり、竈(かまど)からは焦げ臭い匂いが立ち込め。
机の上には見るも無残な『焦げた何か』が幾つも置いてあった。
そして──……
「ひっく…ひっく……」
何やら啜り泣くような、小さな声。
台所の中の方まで入って目に映ったのは、隅っこの方で、小さく小さく丸くなり……
肩や背中を震わせる、美依の姿だった。
「美依……?」
「……っっ、まさむ………!」
声を掛けて、手で肩を叩くと、美依が反射的に振り返った。
が、その顔ときたら。
涙でぐしょぐしょに濡れ、頬には煤(すす)を擦った跡。
美依の白い肌が薄汚れており……
瞳だけが涙でやたらキラキラと光っている。
その顔を見て、俺は思わず目を見開いた。
「お前、何やってんだ?」
「ま、政宗…ゆっくり帰って来てって、い、言ったじゃない……!」
「……もう、戌の刻過ぎたぞ?」
「え、もうそんな時間……?!」
「ああ、充分ゆっくり帰ってきたつもりだけどな」
「……っっ」
「美依……?」
すると、美依はぐいっと瞳の涙を拭って立ち上がった。
が、拭った手が煤まみれだったせいか……
目の周りが、真っ黒く薄汚れてしまった。
美依は一体何をやっていたんだろう。
俺が訝しんで瞳を向けると……
美依はバツの悪そうに俯き。
そして、ぽつりぽつりと、何かを白状するように話し始めた。