〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第30章 〖V.D企画〗甘い恋人-政宗編-❀伊達政宗❀
「まぁ、好きなだけ悩んでください。俺はこれで」
「待て、家康!」
首を捻る横で、スタスタと踵を返す家康を俺は慌てて引き止めた。
俺だって軍議が終わって、すぐに帰りたい。
しかし、美依にゆっくり帰って来いと言われた以上…
どこかで時間を潰さねばならないのだ。
具体的に何時とは美依は言ってはいなかったが…
まぁ、いつもより少し遅く帰ればいいのだろう。
「なんですか、政宗さん」
「俺の時間潰しに付き合え、話を聞いた以上」
「断ります、帰って書物を読みたいんです。あんたと居ると、美依の惚気しか聞かされないんで、ほんと嫌ですよ」
「なら、俺が読み聞かせてやるから。それに、美依の話は飽きないだろ?」
「こっちは耳にたこですから」
「なら、そのたこ、ひん剥いてやる。行くぞ」
嫌がる家康の肩に腕を回し、半ば強引に家康を引きずって行く。
俺から逃げようなんて、百万年早い。
何がなんでも、時間潰しに付き合ってもらう。
────それから
家康の御殿で、美依の話を聞かせたりしながら、なんやかんでや時間を潰した。
家康は何かうんざりした様子だったが、結局は最後までこちらの話に付き合ってくれた。
美依の企みについても話し合ったが、結局これと言った良い答えも出ず。
まぁ、帰ってみれば手っ取り早いと言う事で。
戌の刻に差し掛かる頃、俺は家康の御殿を出た。
帰り道、空を見上げてみれば──……
冴え冴えと細い月が、濃紺の空に浮かんでいて。
綺麗だなと思う半面、一つだけ夜空に輝く月が、少し寂しく思え。
どことなく人恋しくなった俺は、美依を思い浮かべながら、その帰途を早めたのだった。
────…………
(……なんか、焦げ臭くないか?)
戌の刻過ぎ、御殿に着いた俺は。
女中に出迎えられながら、思わず眉をひそめた。
いつもなら、俺が帰って来る頃、美依が玄関で待ち伏せしていて、そして出迎えてくれるのだが。
今日はそれが無かった上に、なんか変な匂いが玄関まで漂っている。
何かが焼け焦げたような……
俺は腰から刀を抜いて、女中にそれを預けながら。
少し怪訝そうに尋ねた。