〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第29章 《桃源郷物語》欠片-kakera-❀伊達政宗❀
「んっっふぅ……!」
瞬時に美依を胸に引き寄せ、その唇を塞ぐと。
美依は抵抗して、腕の中でもがいた。
その力を奪うように、舌先から優しく蕩かして。
優しく優しく、気持ちを注ぐ。
ありったけの想いを込めて──……
すると、美依は嘘のように大人しくなり。
胸にしがみつき、口付けを受け入れた。
「…痛てぇよ……」
やがて、どちらかともなく唇が離れ……
ぽつりと本音を漏らすと、美依は小さく息を飲んだ。
「痛い、お前に拒まれると、心が痛てぇ…」
「政宗……」
「言い訳してた、俺…お前がウブだから反応を確かめたい、とか。濡れた顔さえ見れたら満足、とか。自分の気持ちに蓋して、家康に指摘されても無視して」
認めてしまえば簡単な事。
愛しさがとめどなく溢れ……
それを伝えねば、それこそ痛くて痛くて。
心が死んでしまいそうになる。
強く優しく、美依の小さな身体を抱きしめ。
それが欲しい『本当の理由』を。
やっと……口から紡いだ。
「お前の事が…めちゃくちゃ、好きだ──……」
暫し、無言の時が流れ……
これで拒まれるなら、本当にもう止めよう。
そう思っていると。
「……っ!」
美依が背中に腕を回してきたので、思わず身体が強ばった。
すると、美依は小さく笑い……
顔を胸に押し当てながら、少し可笑しそうに言った。
「政宗、人の事言えないよ。何びっくりしてるの?」
「美依……」
「言ったでしょ、私は政宗が好きだから…だから、こうしてるの」
「……っ!」
「叩いちゃって、ごめんなさい……痛かったよね」
(美依…お前は、本当に……)
自分が襲われた事を置いといて、叩いた頬を気にする美依。
どこまで真っ直ぐなんだろう。
どこまで―……
こちらを掻き乱したら済むのだろう。
もしかしたら、コイツは天然で最強の悪魔かもしれない。
でも──……
それに心を奪われたんだから、この俺が。
もう、敵わない。
コイツには……敵わない。