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〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀

第29章 《桃源郷物語》欠片-kakera-❀伊達政宗❀






「ねぇ、政宗。どこ行くの?」




その日の夜。
政宗は美依を連れ、城下の外れを歩いていた。

すでにあまり人の居ない城下外れは静まり返っており、二人の足音だけがやけに響く。


『桃源郷』の宿泊予約はすんなり取れた。


めちゃくちゃ妖しげで色っぽい女主人が、『今夜でも構いませんよ?』とか言うので。

なら早い方がいいと、すぐに美依を連れ出した。

これで最近の目下の関心事を確かめられる。
浮き足立って、思わず笑みが零れた。




「最近出来た宿に、名物の万華鏡があるそうだ。お前に見せたくてな」

「へぇ、万華鏡……」

「見てみたいだろ?」

「まぁ、少し…それでわざわざ呼び出してくれたの?」

「まぁな、からかってばかりいる詫びに」

「なんだ、そーゆー事」




美依が鈴を転がすような声で笑う。
真意を知ったら、真っ赤になって怒りそうだが。

それ以上に気持ち良くしてやる。
何も考えられないくらいに―……

そう思って、思わず美依の手を引こうとすると。
美依は急いで、その手を後ろに隠した。




「……なんだよ、手を繋ぐくらいいいだろ」

「やだ、政宗には何されるか解んないもん。それに手を繋いだりとかは恋仲とかにならないとしないんだよ」

「なら、恋仲になるか?」

「へ?!」

「それならいいんだろ、手を繋いでも。ああ、そうすりゃ口付けしても、怒られる理由が無くなる訳だ」

「ほ……本気じゃないくせにっ、そんなのお断りだよっ」




美依は見事に申し出を断って、真っ赤な顔を背ける。
それを見て、思わず顔をしかめた。

別に深い意味なんてない。
ただ、いつものようにからかっただけだ。

────しかし




(なんだ、これ……変に胸が痛い)




断られた事に、妙に傷ついている自分がいた。
美依が『いいよ』なんて言うはずがない。
そんなの解っているのに。






────なんで、こんなにがっかりしている?







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