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〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀

第3章 華火と微熱と光秀さん《前編》❀明智光秀❀





『美依───…………』




もっと、私の名前を呼んでください。
その声で、貴方の意地悪で優しい声で。


そして、もっと頭を撫でてください。


大きな手。
安心するような、長い指で。
髪を梳いて、愛おしむように、触れて。




────光秀さん

私、貴方の事…………



















(………あれ………………?)




すーっと何かに導かれるように。
私は目を覚ました。

頭が痛い。
それに、身体も怠くて鉛のように重い。

数回瞬きをして、鈍い思考を動かす。

目の前には見慣れない天井。
身体は柔らかな布団に沈み……

額には、ひんやりした手拭いが乗せられていた。




「私…………」

「……目を覚ましたか」




声を発した途端。
呆れたような、涼やかな声が返ってきた。

声のした方に、首を向けると。

褥の横に、光秀さんが座っていて。
こちらを、目を細めて見ていた。

白銀色の髪、淡い宝石のような瞳。

その姿を確認した途端、意識はハッキリして。
口からポロリと素朴な疑問が零れた。




「光秀さん、こんな所で何をしてるんですか」

「それはお前の方だ」

「え?」

「ここは俺の御殿だ…お前、茶屋で倒れたんだぞ」




そう言われ、記憶が戻ってくる。
具合が悪いのに無理して店に立って。

光秀さんに『休め』と言われたのに、それを突っぱねて。

そしたら、立って居られなくなって、意識が無くなって……

ここは、光秀さんの御殿。
それはつまり……




「光秀さんが、運んでくださったんですか……?」

「そうだ、目の前でぶっ倒れたからな。店主に言って、そのままお前を御殿に運んだんだ。ああ……熱はだいぶ引いたな」




光秀さんが額の手拭いを取り、茶屋でしたように手を当てる。

安心する大きな手。
そこから流れてくる温もりは優しくて……

思わず目がじんわり熱くなった。




「ごめんなさい、光秀さん。迷惑かけちゃいました」

「そうだな、反省しろ」

「はい……本当にごめんなさい……」

「なんだ、あんなに突っぱねた割に、やけに素直だな……まったくお前は」

「……っ」




すると、光秀さんは額に触れていた手を、そのまま頬に滑らせ……

頬を撫でながら、安心したような優しい口調で言った。




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