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〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀

第3章 華火と微熱と光秀さん《前編》❀明智光秀❀






「……心配したんだぞ、目が覚めて…良かった」




その、少し掠れたような、低く甘い声。
向けられる琥珀の瞳は優しく……

とても、とても心配してくれていたのだと。

その時、光秀さんの優しさに触れた気がして。
心臓がぎゅっと締め付けられた。



───光秀さんは

いつも、私に意地悪で、からかってばかりで。
私はいつも振り回されて、変にどきどきして。


それなのに……


もっと、その優しさに触れたいと。
この人の、中に秘める温かさを。


もっと、もっと、感じたい。


そんな風に、強く、激しく思って。
なんだか……息苦しかった。


光秀さんに抱く、蓋をしていた感情。


それは、いつの間にか大きく膨れ上がり。
もう、手が付けられない程。


熱く怠い身の内を、暴れ回っている気がした。


その感情の『名前』を。
私が自覚した……瞬間だった。






「……帰ります、ありがとうございました」

「美依?」






私はなんだか、居ても立っても居られなくて。
褥から身を起こし、立ち上がろうとした。

恥ずかしくて、何だか恥ずかしくて。

光秀さんの顔を見ていられなかった。
触れられるたびに、何かが心から溢れだしてしまう。


そんな気がして…怖かった。




「……あっ」




足を踏ん張り、立ち上がりかけた瞬間。
ふらりと目眩が起きて、踏ん張った足から力が抜ける。


崩れる…と思った瞬間。


身体は、ふわりと抱き留められ。
抱き留めたその人は、温かな身体で私を支え、腕を背中に回しながら…

呆れたような、心配したような。
低く優しい声を耳に注いだ。




「何をやってる、いい子で寝ていろ、美依」




瞬間、身体の血液が逆流したかのように、頭に血が上る。

その触れ合った身体から流れてくる体温。
ふんわり香る、落ち着く匂いも。


全てが、私を狂わせる。


身体の中を暴れる感情は。
今すぐ堰を切って溢れてしまいそうだった。

不意に熱くなった瞳から、雫が零れる。

馬鹿みたいに、子どもみたいに。
それは頬を伝って流れていく。




───囚われてしまった




光秀さんの意地悪で優しい、甘い罠に。
私は、いつの間にか、こんなにも……




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