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〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀

第27章 《桃源郷物語》序章〜動き出した刹那〜





(動じてないな……面白い)



光秀は片手を離すと、その形のいい唇に、すっと指を這わせた。
すると、女の喉がこくりと鳴る。
どうやら反応は普通の『女』のようである。



「……俺が忘れなくても、文句は聞かないぞ」

「大丈夫です、必ずお忘れになります」

「覗く前に、言っておきたい事は?」

「……そうですわね、貴方様はこのお宿の名前、桃源郷の意味をご存知かしら」

「……いや」




女は空いた手で万華鏡を手繰り寄せると、光秀の目の前に差し出して言った。







「桃源郷とは、俗界から離れた、完璧もしくは理想とされている架空の場所の事。しかし理想郷とは違います。理想郷は到達不可能な夢幻の場所ではない、十分到達可能なものですが……桃源郷は理想の実現を諦めると言う意味を持っています。つまり、現実では決して叶わない想いや情事を交わす場所。叶うならば来る必要は、ありません。秘密裏だからこそ燃える愛もあるんですのよ……貴方に幸がありますように」







光秀は、女の小さな手から万華鏡を覗いた。

その万華鏡の中の小さな世界を垣間見て。

そして……
狂ったように、その小さな身体を抱いた。
















────…………

















「……以上が宿『桃源郷』についての報告です」



その日の夜。
城の広間に集まって軍議を開いた場所で、光秀は昼間の報告を武将達の前で話した。

皆それぞれに信じられないと言った表情を浮かべながら、最初に口を開いたのは秀吉だった。



「危ないな、随分。すぐに女を追い払い、宿を潰した方がいい」



その言葉に反論するように言ったのは政宗だ。
可笑しそう笑いながら、好戦的な目を秀吉に向ける。



「面白いじゃねえか。宿での出来事は綺麗さっぱり忘れるんだろ?だったら、どんなに女を連れ込んでも文句は言われない」

「政宗さんだけですよ、そんな事言うの」



呆れ顔で政宗に物申す家康。
三成は三成で怪訝な表情を浮かべているし……

それぞれの顔を見渡しながら、信長は上座でくくっと声を殺して笑った。





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