〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第26章 白雪-sirayuki-《蜜夜編》❀真田幸村❀
「……なに勝手に腕から抜け出してんだよ」
「ごめん…でも、そろそろ支度しないと気づかれちゃうかも」
「何に?」
「あのね、ここに泊まりに来るの、誰にも内緒で来ちゃったの。だから、お城に居ないの気づかれたら、怒られちゃうから…」
(……そーゆー事かよ)
美依は敵の大将のお気に入りだ。
さぞや、周りの武将達からも可愛がられているんだろう。
それはそれで、むかっ腹が立つが……
美依がそいつらを大事にしているのも、よく解っているつもりだ。
だから、きっとこれは我が儘だ。
『もっと、一緒に居たい』なんて。
「じゃ、支度手伝う」
俺はむっくり起き上がると、褥の横に脱ぎ捨てた夜着を羽織り、美依に近づいた。
そして、美依の背後に座ると、手から櫛を奪い取って長い髪を梳き始める。
すると、美依はびっくりしたように、一回目を丸くさせ。
やがて髪を梳かれるまま、顔を前に戻した。
「髪…結ってくれるの?」
「まーな、やった事ねぇけど」
「え……なのに、やってくれるの?」
「あと少ししか一緒に居れねーなら、ちょっとでも触れてたい……」
(あ……)
思わず心の本音が滑り出てしまった。
しまったと思った時には、もう遅く。
手を止めると、美依が目を輝かせて振り返ってきて……
何やら頬を染めて、ふにゃふにゃニコニコし始めた。
「……なんだよ、その顔」
「え、幸村がちょっとは寂しいと思ってくれてるのかと思ったら、嬉しくて」
「ばーか、んなわけあるか」
「え、違うの……?」
「……そうに決まってんだろ、言わせんな、馬鹿」
ふわりと美依を背中から抱き締める。
そして、首筋に顔を埋め、思いっきり息を吸い込んだ。
(……すげーいい匂い、ほんと離したくねー)
甘い匂いも、柔らかい身体も。
自分の物にしたけど、正式にはまだ違う。
だから、決意する。
いつか、絶対美依を迎えに行くと。
堂々と愛し合っても大丈夫なように。
コイツを必ずかっさらう。
紅に揺らめく想い。
それは一筋の光になって……
俺の心に、一本槍となって、突き刺さる。