〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第25章 白雪-sirayuki-《恋情編》❀真田幸村❀
「なんだこれ」
「夫婦雛だよ」
「夫婦雛?」
「二つで一対になる人形で…私が作ったの」
そう言うと、美依は片方を俺に差し出し。
小さくはにかんだ笑みを浮かべた。
「これはね、ずっと一緒に居ようねって気持ちを込めたの。一つは私、一つは幸村に…私から謝って好きって言う筈だったのに、先越されちゃった」
「美依……」
「私はあの時びっくりしたけど…本当は嬉しかったんだよ。でもなんとなくとか言うから、悲しかった。私は…幸村の事好きだから」
「……」
「でも、気持ち聞けて嬉しかった、これからも……傍に居てもいいよね?」
(────ばか、煽ってんじゃねーよ)
美依から人形を受け取り、心で苦笑する。
こいつはどうやら、無自覚に男を煽る癖があるらしい。
こんな風に可愛く笑って、可愛い事言われたら……
本当に止まらなくなるのに。
まぁ、もう止める気もないけれど。
「ありがとな、じゃあ代わりにこれやる」
俺は人形を懐にしまうと、代わりに持ってきた耳飾りを取り出し。
美依の髪をゆるりと耳に掛けると、そのまま片方を付けてやった。
美依が手を耳に当て、びっくりしているので…
その手を取り、もう片方を手に乗せる。
すると、それをしげしげと見ながら、何かきらきらした眼差しで俺を見つめてきた。
「ありがとう、可愛いっ……」
「詫びにお前にやる。俺もお前と同じ事考えてた、渡して…謝って気持ち伝えようって。言っとくけど、佐助に店番させてまで来たんだからな」
「あ、じゃあ戻らないと駄目だね」
「……」
今度は、しゅんとした表情になる美依。
本当にころっころ表情が変わって可愛いな。
俺は、再度美依をふわりと抱き締めた。
髪から甘い香りが漂って……
そのまま意識をそっちに持っていかれそうになる。
(ああ、堪んねー……でもやっぱ戻らなきゃ駄目か)
俺はちゅっと額に唇を押し当て。
そして、そのまま耳元で囁くように……
美依に『約束』を交わす。
それは、俺達だけの秘密。
これから訪れるであろう。
────蜜な一夜の『秘密の約束』